ファッションにおいて「未来(Future)」という言葉は、時代の移り変わりとともに印象が変わりやすいものです。
しかし、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)の「Future(フューチャー)」は、その枠に収まりにくい存在として語られてきました。
2010年代初頭、スニーカーカルチャーの流れの中で強い存在感を示した品番「S57WS0538」。
それが2026年春夏(26SS)コレクションで、クリエイティブ・ディレクター Glenn Martens(グレン・マーティンス)の手により再登場しました。
今回FASCINATEに入荷したのは、このモデルを象徴する「ブラック・カーフレザー」モデルです。
なぜ、このスニーカーは独特のフォルムを持つのか。
そこに、マルタン・マルジェラの思想がどのように反映されているのか。
本記事では、ブランドの背景から26SSモデルのディテール、そしてReplica(ジャーマントレーナー)との違いまで、順を追ってご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
はじめに:メゾンの系譜と「Future」。マルタンからグレンへ受け継がれるDNA
「Future」というスニーカーを理解するうえでは、まずMaison Margielaというブランドの背景に触れておく必要があります。
創業者マルタン・マルジェラが示した「匿名性」
1988年にブランドを設立したMartin Margiela(マルタン・マルジェラ)は、自身の顔を公表せず、服のタグにもMaison Margiela(メゾン マルジェラ)を書かない(4本の白いステッチのみ)という「匿名性(Anonymity)」を徹底しました。
「誰が作ったか」ではなく「服そのもの」を見てほしいという哲学は、Futureの「ブランドロゴも靴紐さえも隠すデザイン」にも通じる考え方です。
デザインチームによる「Future」の具現化(2010年)
Futureスニーカーが誕生したのは2010年で、マルタン本人がメゾンを去った後の時期にあたります。
クリエイティブ・ディレクター不在の中でデザインチームが形にしたこの靴は、創業者の哲学を読み取りながら、当時のスニーカーとして成立するプロポーションと機能を組み合わせた一足でした。
特定の個人の作家性というよりも、メゾンの考え方がデザインに反映されたモデルと言えるでしょう。
2026年、グレン・マーティンスによる「再構築」
そして現在。Y/Projectなどで構築的なデザインを手掛けてきたGlenn Martens(グレン・マーティンス)が、このモデルをランウェイに戻しました。
26SSのランウェイで61人の子供たちの演奏と共に登場したFutureは、過去のアーカイブへの視点と、現代のムードを重ね合わせたアイテムとして位置づけられています。
デザインの核心。「隠す」ことで成立する一体感
Futureの最大の特徴は、「シューレース(靴紐)を覆い隠す巨大なレザーフラップ」です。
このデザインのインスピレーション源は「ヴィンテージのスキーブーツ」とされています。
紐やハトメといった要素を表から見せないことで、靴の表面情報を整理し、滑らかな曲面とまとまりのある外観をつくっています。
「スリーク」かつ「チャンキー」なシルエット
ボリュームのあるミッドトップでありながら、パーツの見せ方を抑えたフォルム。
これが「スリーク(滑らか)かつチャンキー(厚重)」と評されるFutureのシルエットです。
また、26SSのアップデート版では、足首を固定するパッド入りのベルクロストラップが、靴全体を包み込むような造形へと調整されています。
見た目の変化に加えて、ホールド感の面でも違いが出ています。
「Future (未来)」と「Replica (過去)」。品番の決定的違い
Maison Margielaのスニーカーを選ぶ際、比較対象として挙がりやすいのが「Future(S57WS0538)」と「Replica(S57WS0236)」です。
両者は、ブランドの中でも方向性の異なるアプローチを象徴する存在として知られています。
S57WS0236(Replica):歴史の保存
Maison Margiela 2026SS Collection "Replica"
品番: S57WS0236
価格: 税込¥108,900-
素材: カーフレザー (Calf Leather)
カラー: Off White
サイズ: 40,41,42,43
通称「ジャーマントレーナー」。1970年代のオーストリア軍トレーニングシューズをリプロダクト(複製)したモデルです。
スエードとレザーのコンビ、ガムソールといった構成で、ローテクらしい安定感のある履き味が特徴です。
S57WS0538(Future):革新と前衛
Maison Margiela 2026SS Collection "Future Mid-Top"
品番: S57WS0538
価格: 税込¥176,000-
素材: カーフレザー (Calf Leather)
カラー: ブラック (Black)
サイズ: 41,42
2010年代に誕生した、近未来的なムードを持つハイテクスニーカーです。
機能を隠しながらフォルムを組み立てるアプローチにより、ローテクとは異なる方向性を提示しています。
クラシックな方向性を重視する場合はReplicaが候補になります。
一方で、Futureならではの造形や存在感を重視する場合は、本モデルがより適した選択肢になります。
カルチャーアイコンとして。カニエ・ウェストと「幻の音」
Futureは、2010年代のストリートカルチャーの流れの中で、象徴的な一足として語られてきました。
「Swag Era(スワッグ・エラ)」と呼ばれる時期を想起させるモデルのひとつでもあります。
話題となった「Yeezus Tour」
このモデルが広く知られるきっかけのひとつが、Kanye West(カニエ・ウェスト)による着用です。
2013年の「Yeezus Tour」において、マルジェラのマスクと共に、特別に製作された「ポニーヘア(ハラコ)」仕様のFutureが着用されたことが話題になりました。
ラグジュアリーとストリートの境界が揺らいでいく流れの中で、印象的な一足として位置づけられています。
ファンの間で知られる小ネタ:「Future Squeak(フューチャーの鳴き)」
ここで、初期モデルの所有者の間で知られていた話題にも触れておきます。
歩くたびにレザー同士が擦れて「キュッ、キュッ」と鳴る摩擦音が出ることがあり、通称「Future Squeak(フューチャーの鳴き)」と呼ばれていました。
当時は、レースフラップの裏側にベビーパウダーを塗るなどして、この音を抑える工夫が紹介されることもありました。
(※26SSモデルでは素材の改良により軽減されていますが、もし音が気になる場合は、こうした対策を試してみる方法もあります)
Future Mid-Top ブラックレザーモデルの詳細スペック
今回入荷したモデル(S57WS0538)について、主に質感や配色のポイントを整理してご紹介します。
ソフトカーフスキンと「ベージュ」の対比
アッパーには100%ソフトカーフスキンを使用しています。
きめ細かな表情と自然な艶があり、足に馴染みやすい柔らかさも備えています。
そしてポイントになるのが、履き口からわずかに覗くベージュ(ナチュラルカラー)のライニングです。
オールブラックの印象の中に、内側のベージュが見えることで、履いたときと脱いだときで表情が変わります。
仕上げの美しさや、細部への配慮が伝わるディテールです。
象徴的な「一本の白いステッチ」
「匿名性」を掲げるこのモデルで、ブランドを示す要素として挙げられるのがヒール部分です。
Maison Margielaのアイコンである「一本の白いステッチ(単一ステッチ)」が、ブラックのボディに対して控えめに配置されています。
フラップ下に隠された「紐」
外見はシームレスに見えますが、巨大なフラップの下には通常の平紐(シューレース)が配されています。
「機能はあるが、表に見せない」という設計は、メゾンらしい考え方が表れた構造です。
バイヤーが教える「失敗しないサイズ選び」徹底ガイド
Futureは独自の構造を持つため、サイズ選びでは押さえておきたいポイントがあります。
Replica(ジャーマントレーナー)や他ブランドのスニーカーとも比較しながら、選び方の目安をご紹介します。
内部構造の理解:パッドが生む「フィット感」
Futureの内部には、足首から甲にかけて厚手のクッションパッドが内蔵されています。
そのため、履き始めはReplicaよりも包まれる感覚(タイト感)が強く出る場合があります。
一方で、内部空間(横幅)自体はReplicaよりも広めに設計されています。
推奨サイズ:基本は「マイサイズ」
基本的には「Replica(S57WS0236)と同じサイズ」、または「普段履いているNike / Adidas等のスニーカーと同じサイズ」を選んでいただければ問題ありません。
注意点:「甲の高さ」による制限
注意したいのは「甲の高さ」です。
Futureは甲部分に大きなレザーフラップがあるため、紐靴のように「紐を緩めて甲のきつさを逃がす」という調整には限界があります。
- 甲が標準〜低い方: そのままのサイズで着用しやすい傾向です。
- 甲が極端に高い方: ワンサイズアップ(例: 41 → 42)を推奨します。サイズを上げても、足首のベルクロで固定できるため、踵が浮きにくい設計です。
スタイリング提案:モードとストリートを横断する黒
今回入荷したブラックカーフモデルは、合わせ方によって印象が大きく変わります。
26SSのムードを取り入れたスタイル例として、2つの方向性をご紹介します。
Style 1: The Runway Tuck-in(ランウェイ・タックイン)
今季のグレン・マーティンスの提案を踏まえたスタイルです。
ワイドスラックスやレザーパンツの裾を、あえてFutureのタン(ベロ)の内側にタックインします。
これにより、普段は見えにくいアンクルストラップやアッパーの構造が見えやすくなります。
足元にボリュームと重心をつくり、モード寄りのバランスにまとめる着こなしです。
Style 2: Neo-Street Volume(大人のボリューム・ストリート)
バギーデニムやスウェットパンツなど、裾幅の広いボトムスをスニーカーの上から被せる(クッションさせる)スタイルです。
Futureは甲が高くボリュームがあるため、太いパンツの裾もしっかりと受け止め、クッションが作りやすい設計です。
歩行時にフラップのレザーが光を受けて表情が変わり、カジュアルなボトムスでも足元に締まりが出ます。
まとめ:いま改めて注目したいFutureという選択
Maison MargielaのFuture Mid-Top (S57WS0538)。
このモデルは、「スニーカー」という枠の中でも、構造や見せ方の面で特徴がはっきりしています。
ヴィンテージのスキーブーツという意外なルーツを持ち、2010年代にはカニエ・ウェストの着用で注目が集まり、そして現在はグレン・マーティンスの提案の中で再び位置づけられています。
およそ20年近くにわたり、デザインの核となる要素が保たれながら語られ続けている点も、このモデルの特徴です。
なぜ今、Futureを選ぶのか。
それは、ロゴや装飾に頼らず、フォルムの組み立てだけで存在感をつくっているためです。
靴紐さえも隠し、表面の情報量を抑えた設計は、スタイリング全体を整理して見せたい場面でも活きます。
また、厚手のレザーと内部のパッドにより、履いた瞬間に包まれるようなフィット感が得られます。鏡に映るミッドトップの立体感も含めて、足元の印象をはっきりと作れる一足です。
今回入荷したブラックカーフモデルは、「匿名性」という考え方をブラックでまとめた仕様です。
オールブラックのボディに対して、脱いだときにだけ覗くベージュライニングがコントラストになります。
トレンドに寄せるのではなく、構造やバランスを重視して足元を選びたい方に向いたモデルです。
ぜひ、店頭またはオンラインサイトでご覧ください。