【ブランド紹介】kolor(カラー) ― 新章を率いる堀内太郎と、2026年秋冬コレクション「The Waves」

2026-06-19

テーラードジャケットとMA-1ブルゾンをドッキングしたkolor 2026年秋冬コレクション「The Waves」のランウェイルック
目次

このたびFASCINATEでは、「kolor(カラー)」の取り扱いをスタートします。
東京を拠点とするkolorは、独自の素材選びと、性格の異なる服を一枚に縫い合わせる「ドッキング」の手法で知られてきました。2026年春夏には新しいクリエイティブディレクターを迎え、ブランドはひとつの区切りを迎えています。

ここでは、kolorがどんなブランドなのか、創業者・阿部潤一氏が築いた個性、そして新たに指揮をとる堀内太郎氏による最新作「The Waves」(2026年秋冬)まで、順にお伝えします。

kolor(カラー)とは ― 日本発、「素材」と「ドッキング」で知られるブランド

ウールのジャケットにナイロンのパーツを組み合わせたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

kolorが立ち上がったのは2004年。
デザイナーの阿部潤一氏が手がけ、翌2005年春夏に東京でコレクションを発表しました。2012年秋冬からは発表の場をパリ・メンズファッションウィークへ移し、海外でも名前が知られるようになっていきます。

日本の生地づくりの確かさ、西洋のテーラリング、そして普段着としての気軽さ。
この三つを一枚の服のなかで両立させてきたのがkolorです。

多くのブランドが要素を引いていくミニマルな方向へ進むなか、kolorはむしろ「足していく」作り方を続けてきました。
質感も出自も異なる生地を思い切って組み合わせ、それでも一枚の服としてきちんと成立させる。その腕を支えているのが、パタンナー出身という阿部氏の経歴です。

ブランド名「kolor」に込められた意味

黒のコートにタータンチェックのアイテムを重ねたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

名前のもとは英語の「color(色)」。
ただしつづりはそのままではなく、頭文字を「c」から「k」に替えて「kolor」としています。商標として登録しやすくすること、そして「耳なじみはあるのに、特定の何かを思い起こさせない名前にしたい」という阿部氏の意向から、デザイン会社グラフ(GRAPH)とともに考え出されたものです。

ロゴの「k」には、ほんの少しだけ崩した部分が入っています。
見慣れた形に小さな引っかかりを忍ばせる――その感覚は、服そのものの作り方ともつながっています。

解体・再構築・ドッキングというデザイン

光沢のある黒のコートに、ブルーのニットをケープのように重ねたkolor 2026年秋冬のルック(上半身)

kolorを語るうえで外せないのが「ドッキング」です。
由来の異なる服のパーツを一枚のなかで組み合わせる手法で、生地を貼り合わせるだけのパッチワークとは別物です。

たとえば、ウールやTR素材のジャケットの一部に、ミリタリーのMA-1のディテールを差し込む。
つなぎ目や裾はあえて切りっぱなしのままにして、きちんとした見た目のなかに少しの崩しを残す。この「足す」発想が、kolorらしさの中心にあります。

メインラインのほかに、2013年春夏に始まったセカンドライン「kolor BEACON(カラー ビーコン)」もあります。
本線の形を引き継ぎつつ、つくりをよりシンプルにした、普段づかいしやすい服が中心です。カタカナのロゴや遊びのあるグラフィックなど、ブランドのユーモアが出るラインでもあります。

創業デザイナー・阿部潤一氏 ― 呉服屋に育ち、パタンナーから独立まで

阿部潤一氏は1965年、山形県天童市の呉服屋に生まれました。
祖父の代から続く店で、幼い頃から反物や日本の色に囲まれて過ごしています。母親も文化服装学院で学んだ人で、家庭には洋裁に親しむ空気がありました。

本人は「いずれ呉服屋を継ぐもの」と言われて育ちましたが、高校時代にデザイナーズブランドの服と出会い、進路が変わっていきます。
卒業後はいったんロンドンへ。ただ「ファッションを学ぶなら文化服装学院がいい」と勧められ、一年で帰国して同校に入りました。

学校を出たあとはワイズ(Y's/ヨウジヤマモト)に入り、続いてコム デ ギャルソンへ。
いずれもパタンナーとして働き、コム デ ギャルソンの時期にはジュンヤ ワタナベのデビューコレクションの型紙も手がけています。1994年には学生時代の仲間とブランド「PPCM」を立ち上げ、約10年を経た2004年に、自身のkolorをスタートさせました。妻は「sacai(サカイ)」を手がける阿部千登勢氏です。


ブラウンやグリーン、ブルーグレーのニットを重ねたkolor 2026年秋冬のルック(上半身)

阿部氏は自分の色づかいを「和菓子っぽい」と言い表すことがあります。
落ち着いたアースカラーやグレーを土台に、まったく違うトーンの鮮やかな色をぽんと差す。呉服屋で育った背景とも重なるこの配色は、ひと目でkolorとわかる手がかりになっています。

凝ったデザインを実現するため、生地づくりから縫製まで、多くの工程を国内の工場と組んで進めてきたことでも知られます。

「素材の魔術師」と呼ばれることもありますが、奇抜さそのものが狙いというより、糸の選び方や編み地の組み立てなど、服の土台から手を入れていく姿勢にこそ持ち味があります。

歴史的な転換 ― 堀内太郎氏が新クリエイティブディレクターに

ブラウンのブルゾンに蛍光色のグラフィックを合わせ、白のワイドパンツを履いたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

設立20年の節目にあたる時期、kolorは日本のブランドではあまり例のない決断をします。
創業者の阿部潤一氏が2025年秋冬を最後にメインデザイナーを退き、2026年春夏から堀内太郎氏が新しいクリエイティブディレクターに就いたのです。退任後も阿部氏はチームに残り、後ろから支える形をとっています。

創業者が健在のうちに、これだけ背景の異なる作り手へ引き継ぐ例は、海外では珍しくないものの、日本ではそう多くありません。
「足す」阿部氏と、「引く」堀内氏。作風が大きく違うだけに、当初は不安の声もありました。

堀内太郎氏という作り手

堀内太郎氏は1982年、東京の生まれ。
15歳でイギリスに渡り、ロンドンのキングストン大学で写真を学んだのち、2003年にアントワープ王立芸術学院のファッション科へ進み、2007年に修士課程を修了しています。

2010年春夏に自分の名を冠した「タロウ ホリウチ(TARO HORIUCHI)」でデビュー。
2012年には第30回毎日ファッション大賞で新人賞・資生堂奨励賞を受けています。この年、大賞を受けたのが阿部潤一氏でした。


グリーンのコーデュロイジャケットにスポーティーなトップスを合わせ、ワイドパンツを履いたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

2018年秋冬には、「日常における普遍性」を掲げたメンズブランド「ティーエイチ プロダクツ(th products)」を始動。
芯地の硬さやポケットの深さといった細部まで突き詰める、構築的なものづくりで知られます。

自身のブランド以外でも、「ムジ ラボ(MUJI Labo)」の監修や「デサント オルテライン(DESCENTE ALLTERRAIN)」のデザイン、航空会社のユニフォームなど、服にとどまらない領域で経験を重ねてきました。

「引き算」と「足し算」が出会う

グレーのテーラードジャケットと同じ素材のロングスカートを合わせたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

二人の最初の接点は2007年、パリにさかのぼります。
アントワープに在学していた堀内氏が、先輩デザイナーの展示会の設営を手伝っていたとき、すぐ隣で会場を整えていたのが阿部氏でした。あとで知ったのは、それが阿部氏にとってkolor初のパリコレクションだったということです。

その後しばらく交流はなく、再会は2012年の毎日ファッション大賞。
阿部氏が大賞、堀内氏が新人賞を受けたことをきっかけに、ときどき食事をともにする間柄になります。継承の話が出たのも、そんな席でのことだったといいます。

引いていく美学を持つ堀内氏ですが、学ぶ過程で「足す」表現にもさんざん触れてきたため、引き受けることに迷いはなかったと話しています。
堀内氏がkolorに加えようとしているのは、阿部氏が築いた技術とユーモアの上に、テーマやカルチャー、背景といった読み解きの層を重ねることです。

阿部氏時代のkolorはシーズンテーマをあえて立てず、一着ごとの完成度で全体を組み立てていました。
対して堀内氏は、着想を集めたムードボードからコレクションを起こしていきます。「自分はデザイナーというよりディレクター」という言葉どおり、kolorという中身を新しい器に移し替えるように、ブランドを次の段階へ進めています。

2026年秋冬コレクション「The Waves」 ― 嵐の海と、その先の光

蛍光イエローのニット帽に、ロープを編んだバッグを合わせたkolor 2026年秋冬「The Waves」のルック(上半身)

堀内氏にとって2作目となる2026年秋冬のテーマは「The Waves」。
下敷きになったのは、ロバート・エガース氏監督の映画『ライトハウス』です。1890年代の孤島を舞台に、荒れる冬の海と、灯台の光にのまれていく灯台守を描いた作品。そこに、変化の渦中にある新しいkolorの姿が重ねられています。

会場に流れていたのは、コーネリアス氏(Cornelius)による楽曲で、歌声はAIでつくられたものでした。
もとは阿部潤一氏のラストショー(2025年秋冬)の最後を飾った曲で、音楽を相談された堀内氏がコーネリアス氏を推したことから生まれています。堀内氏はこれをデビュー作から会場のBGMに使い続けており、受け継がれていくものが音にも表れています。

着想源は映画『ライトハウス』

グレーのストライプの縮絨コートを重ねたkolor 2026年秋冬「The Waves」のランウェイルック

最初に出てきたのは、生き延びようとする意志と、時間の重なりを感じさせる服でした。
縮絨のコートは、重ね着のように見えて、実はベストとシャツのディテールをひとつにまとめた一枚仕立てです。


ブラウンを基調にした起毛ニットに、ベージュのカーゴパンツを合わせたkolor 2026年秋冬のランウェイルック

シャツには潮風にさらされたような強いシワが入り、ほどけていくニットと合わさって、難破船から流れ着いた布のような表情になっています。
堀内氏によれば、ねらいは「寒い海辺で雨風をしのぐ、暖かい服」。こうした使い込んだような質感も、機能と理屈に裏打ちされたものです。

素材や色、パーツの思いがけない取り合わせという阿部氏ゆずりの引っかかりは残しつつ、そこに堀内氏の静けさが深く入り込みました。
20年以上勤めるパタンナーは、堀内氏の線は阿部氏の描く曲線より直線的なのに、出来上がりは丸みを帯びる、と話します。無造作に体へ沿うように見えるドレープも、引き切った直線の積み重ねから生まれているわけです。

ショーを彩った素材と色

アンカーのチャームをあしらい、ベストとペプラムを重ねたグレーのテーラードのkolor 2026年秋冬のルック(上半身)

コレクションの軸は、出自の違う服をつないだ一枚一枚です。
ばらしたミリタリーウェアは端正なジャケットへとつながれ、光沢のある素材にはケープのようにニットが重ねられています。

今季は、性別の線引きをゆるめる姿勢も目立ちました。
男性も女性ものを着るし、その逆もある――そんな堀内氏のまなざしが、kolorの服に行き来する自由さをもたらしています。


鮮やかな黄色の漁師風ダッフルコートを纏ったkolor 2026年秋冬の終盤のランウェイルック

細部にも物語が宿ります。
ペプラムのブルゾンに見える波打つ形は、寄せては返す波そのもの。ケープのように付いた袖は、嵐をしのぐ姿であると同時に、古い殻を脱ぐような変化も思わせます。

色は、重く沈んだ暗いトーンから、しだいに光を含んだトーンへと移っていきました。
終盤に現れたのは、金色に光るデニム、襟に魚をかたどった飾りの付いたコート、そして鮮やかな黄色の漁師風ダッフルコート。暗く始まり、その先に明かりが見える――そんな流れを、色そのものでたどる構成になっています。

「カラー」×「アイヴァン」のサングラス

新体制のkolorは、アイウエアのアイヴァン(EYEVAN)と初めて組んだサングラスも発表しています。
「異なる時間軸の交差」をテーマにした全3色で、コレクションを貫く「時間」という主題が、アイウエアにまで広がっています。

ゆとりのあるシルエットと合わせ方

ワインレッドのやわらかなセットアップをゆったりと着たkolor 2026年秋冬のランウェイルック

kolorは、トップスやアウターに肩を落としたゆとりのある形を取り入れることが多いブランドです。
その分、ボトムスは膝下で細くなるテーパードや、足首の見える短めの丈を合わせ、上のボリュームを下ですっきりまとめます。この上下の取り合わせが、kolorらしい着姿のもとになっています。

ドッキングや配色で見どころのある一枚が多いので、その服を主役にして、ほかはシンプルにそろえると落ち着きます。
一枚で着こなしが決まりやすいのも、取り入れやすいところです。

同じ服でも、身長や体型で見え方は変わります。
気になるものは、実際に袖を通してバランスを確かめるのがおすすめです。

色で選ぶという楽しみ

ブラウンのブルゾンとティールブルーのコートを重ねた配色が目を引くkolor 2026年秋冬のランウェイルック

kolorを選ぶとき、色は大きな手がかりになります。
落ち着いた色を土台にしつつ、表地と裏地で色をずらしたり、思いがけない差し色を入れたり。ひと目でkolorとわかるリズムが、配色に組み込まれています。

シンプルな装いにkolorを一枚足すだけで、全体に奥行きが出ます。
ドッキングや配色そのものが見せ場になる服が多いので、合わせるものは無理に主張させず、すっきりまとめると収まりがよくなります。

FASCINATEでのお取り扱いについて

テーラードジャケットにニットの袖を組み合わせたkolor 2026年秋冬のルック(上半身)

FASCINATEでは、今回ご紹介したkolorの取り扱いを新たに始めます。
入荷を予定しているアイテムや時期、サイズの展開などは、店頭またはお問い合わせにてご案内します。気になるものがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

取り扱いは、京都のFASCINATE KYOTOと、大阪・心斎橋のFASCINATE_THE Rの2店舗です。
実際に手に取って、素材の感触やシルエット、配色をご覧いただけます。ぜひ店頭にもお立ち寄りください。

遠方の方や、入荷の状況を早めに知りたい方は、オンラインストアや各店舗へのお問い合わせもご利用いただけます。

阿部潤一氏が築いた土台の上に、堀内太郎氏が新しい視点を重ねて歩き出した新しいkolor。
その一歩めとなる服を、ぜひFASCINATEでご覧ください。

ミリタリーベストを重ねたkolor 2026年秋冬コレクションのランウェイルック

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