デニムジャケットを何着か着てきた方ほど、TCBの20's Jacketは、最初に襟へ目が向くと思います。横へ開く小さな襟、控えめなボタン、左胸に一つだけ付く丸いフラップ。見慣れた1stの構成なのに、顔つきは少し違います。
この違いは、装飾を加えて作ったものではありません。1920年代の506XXを手に取り、型紙の線、生地の置き方、ミシンが角を回る動きまで読み直した結果です。12.5ozのメンフィス綿デニムも、後の年代の生地とは別の出発点を持ちます。
今回は、20's Jacket 12.5oz(washed)を、表の顔から裏の縫製、そして洗って着込んだ後へ順に見ていきます。1stという共通の形の中に、1920年代を選ぶ理由がどこまで詰まっているか。すでに30'sや大戦型を持っている方にも、比較しながら楽しんでいただきたい一着です。
1920年代の506XXを、現物から作り直す
20's Jacketの手本になったのは、ヴィンテージコレクターの古泉さんが所有する1920年代の506XXです。TCBの井上 一さんは、古泉さんから実物を借りることで、このジャケットの細部を調べる機会を得ました。
貴重な収集品を工場へ託した背景には、日本にあるヴィンテージを日本のものづくりに生かし、その価値を次へ渡したいという古泉さんの考えがありました。2022年の発表時には、TCBの店頭で手本の実物を見られる機会も設けられています。製品だけを完成させるのではなく、もとになった服まで共有するところに、この企画の姿勢が表れています。
写真からディテールを拾うことと、実物を裏返し、縫い代をめくり、平らに置いて肩の角度を比べることでは、見える情報が違います。20's Jacketの面白さも、表から分かる襟やボタンだけでは終わりません。内側に隠れた生地端や、ポケットの角に残る運針まで、原本を触って初めて読み取れる部分が再現されています。

なお、20's Jeansの手本は、TCBが所有する1922年型のジーンズです。上下は同じ12.5oz生地で組めますが、参考にした服の来歴まで同じというわけではありません。ジャケットは1920年代の506XX、ジーンズは1922年型。それぞれの実物から得た情報を、TCBの20'sという組み合わせへ落とし込んでいます。
四角い襟は、先端の形だけで決まらない
型紙は長方形。閉じると、横へ広がる
20'sの襟は、一般的なGジャンのように先へ向かって角度を付けた形ではなく、型紙そのものがほぼ長方形です。着ると左右へ広がり、一番上のボタンまで留めても、襟先が前へ落ち込むより横へ開きます。
そのため、前を開いたときの軽い表情だけでなく、首元を閉じたときにも独特の形が残ります。シャツのような鋭い襟を期待すると違いを感じますが、この四角い輪郭が、小ぶりなボタンや丸いフラップと一緒になることで、後の1stとは異なる、直線と曲線の入り混じった顔になります。

井上さんは、当時の型紙に直線が多い理由として、パターンの発達や作業効率の可能性に触れています。ただ、効率のためだったと一つに決められるものではありません。製品で見るべきなのは、そうした理由を想像できるほど、長方形の形と肩の傾斜が具体的に残されていることです。
肩の傾斜まで写している点は、襟の形と切り離せません。肩線がどの角度で外へ下がるかが変われば、襟から肩、袖へ続く輪郭も変わります。肩幅の数値だけをそろえても、別の年代のGジャンと同じ収まりにはならない理由です。平らに置いた直線的な形と、体へ乗せたときの肩先を往復して見ると、20年代の型紙を着る面白さがつかめます。
縫い代に隠した白耳と、生地の地の目
襟の縫い代には、生地の端である白耳が使われています。ロールアップしたジーンズのように表へ見せる耳ではなく、折り込まれて、通常は内側に隠れる部分です。
TCBが公開した裁断用のマーキングを見ると、長方形の襟パーツが生地端へ置かれています。耳を飾りとして後から加えるのではなく、襟をどこから裁ち出すかという段階から、手本の構造を拾っているわけです。着用時には目立たない仕様ほど、原本の読み方がよく表れます。
襟では、織りの向きも見ておきたいところです。20'sは後の年代の襟とは生地の地の目の取り方が異なり、色が落ちて糸の表情が見え始めると、その違いも分かりやすくなります。新品の襟の輪郭と、育った襟の織り筋を、別の楽しみとして見られる作りです。
小さいボタンと、丸く曲がる胸ポケット
ボタンを大きくしないことで残る、前身頃の間合い
フロントには、TWO CATS BRANDの刻印が入った小ぶりなボタンが並びます。後のデニムジャケットで見慣れた大きさより小さく、ジーンズのボタンフライを思わせるサイズです。襟が小さいぶん、ボタンだけが強く前へ出ず、前立てとプリーツの線を読みやすい顔になっています。

前立ての両脇にはプリーツが入り、横長の四角いステッチで押さえられています。ボタン、プリーツ、押さえのステッチが縦に並ぶため、片胸だけのポケットでも正面に十分な情報があります。色が濃い間は控えめですが、縫い目と折り山にアタリが出るほど、この配置がはっきりしてきます。

ホームベースの形を、ステッチが丸く回る
左胸のポケットは、下へ向かって角のある形です。それでも、縫い目は角をきっちりなぞるのではなく、丸く回っています。2本の針が並んだまま方向を変えるため、内側の針の軌道が一瞬ふくらみ、部分的にポケットの輪郭からはみ出すところも生まれます。

ポケット本体の角と、丸く進む二本の縫い目を比べてください。
TCBでは、この運針を製品で出すために、縫う前に何度も試しています。単に縫い目を乱せば同じ雰囲気になるのではなく、止まらずに曲がる動作を通すことで、2本の線の間に独特のずれが出る。再現しているのは、完成した線だけでなく、その線を作ったミシンの進み方です。
現在の感覚なら、角を整え、線をそろえる方へ直したくなる部分でしょう。20'sでは、そこを整えすぎると手本の表情が消えます。自社工場で縫うTCBは、サンプルそのものへ注意点を貼って要点を共有し、どの崩れ方を残すかまで縫い手へ伝えています。
丸いフラップは、裏の縫い止めも見る
フラップの角にも丸みがあります。ポケット本体と同じように、この丸みは切った形だけでなく、針がどう回ったかと一緒に見る部分です。左右が完全な鏡像ではないため、ボタンホールの位置を決める際にも、単純に中心を割ればよいわけではありません。TCBの生産時には、フラップの形に合わせ、位置を細かく調整しています。
もう一つは取り付けの工程です。この時代を参考にした20'sでは、フラップを別に、1本針のミシンで四方へ縫い止めています。後のジャケットに見られる、ポケットからフラップまで連続して縫う方法とは違います。表の丸い線を見て、裏の縫い止めへ視線を移すと、一つのポケットにも複数の工程があることが分かります。
12.5ozのメンフィス綿を、20年代の表情へ
生地は、メンフィス綿100%の糸をタテ・ヨコとも8番手で使った、12.5ozの別注デニムです。TCBが20'sのために綿から選び、青みの強いインディゴの表情まで考えて作っています。
30'sの14.1oz、New S40'sの14oz、Late S40'sの13.5ozと並べると、20'sは軽い生地です。ただし、薄くて柔らかいという一言では捉えきれません。表面には糸のムラや毛羽があり、洗い済みでも織りの表情が残ります。厚い生地の重さを求める方には30'sが候補になりますが、軽さの中に古いデニムらしいざらつきと青さを求めるなら、20'sの性格が合います。

12.5ozという数値は面積当たりの生地の重さで、ジャケット一着の重量ではありません。着やすさは肩の位置、袖の取り方、身幅にも左右されます。この生地と短めの箱形の身頃が組み合わさることで、厚手の1stとは違う、シャツの上にも羽織りやすい一着になっています。

線で落ちる生地に、丸い縫い目が浮かび上がる
TCBは、同生地の20's Jeansの経年変化を、1937年型のゴツゴツした点落ちと対比し、ある程度の長さを持った線で色が抜ける表情として紹介しています。20's Jacketも、生地の青さが薄くなっていく過程と、縫い目に沿って明るい線が現れる過程を同時に楽しめます。
とくに見たいのは、胸ポケットの丸く曲がったステッチです。2026年にTCBが紹介した、全国を移動する冷蔵庫整備士の20's Jacketでは、着込んで縫い目にアタリが出たことで、その丸い軌道がよく分かるようになっています。仕事の移動の相棒として着られた一着が、製造時に狙った線を、色の差として見せてくれた例です。
この所有者の洗濯頻度までは示されていません。したがって、同じ回数着れば同じ色になるという見本ではなく、縫製の特徴が、摩耗によってどう見えるようになるかを読む一着です。プリーツの折り山、襟、袖口、ポケットの重なりなど、自分の動きで擦れる場所が増えるほど、新品では静かだった構造が前へ出てきます。
背中を継ぐTバックと、腰を絞るシンチ
背中はサイズ34〜38が中心の接ぎなし、40以上が中心で左右を継いだTバックです。ヨークの横線と身頃中心の縦線が交わるため、この名前で呼ばれます。

中心の接ぎがない背面と、中心で継いだTバック。サイズ40から背中の構造が変わります。
もともとは、限られた生地幅から大きい背中を取るための構造です。TCBが公開したサイズ46のマーキングでも、背面を一枚で取ろうとすると幅が足りないことが分かります。希少なヴィンテージの目印として知られますが、まずは裁断の制約から生まれた接ぎとして見ると、製品の背中の見え方も違ってきます。
40からTバックを楽しめることは、このモデルの選択肢の一つです。ただし、背中の線を得るために胸や袖が余りすぎるサイズを選ぶと、20'sの短丈と箱形のバランスまで変わります。肩の落ち方と前を閉じた身幅が合うかを先に見て、そのサイズの背面仕様を確かめる順序がおすすめです。
腰にはシンチバックが付き、身頃の余裕を背面でまとめられます。裾を細く作り替えるのではなく、元の箱形に対して絞りを加える仕組みです。TCBは20's JacketとJeansのバックルを変更しているため、金具の細部は現在の商品写真をご覧ください。針のある尾錠は、先端や金属の角を重ねる服、椅子、車の内装へ当てないよう扱います。

縮みを見越したサイズ選び。短丈と肩を一緒に見る
20's Jacketはwashedの状態でお届けします。一度洗ってあることと、この先まったく縮まないことは別です。TCBは、20'sの生地は将来的な縮みが出やすい傾向にあるとして、新品時の寸法だけで小さく決めないよう案内しています。
他のTCBジャケットから選ぶ場合、メーカーの比較目安は、50's Jacket・S40's Jacketより1サイズ上、Two Cats Blouseと同サイズ、Cat Boy Jacketより1サイズ下です。これは、それぞれをすでに着ていて、そのフィットを基準にする場合の案内です。一般的なS・M・Lを一律に数字へ置き換える表ではありません。
20'sは身幅に余裕があり、着丈は少し短めです。Tシャツの上で前を閉じるなら胸と腹、シャツやスウェットを重ねるなら脇と上腕、肩を落として着るなら袖先までの長さを一緒に見ます。肩幅だけが合っていても、腹部のボタンに引かれるしわが集中する、腕を前へ出すと背中が強く張る、といった状態では、その人の着方に対して余裕が足りません。
丈を長くしたいという理由だけで大きくすると、着丈と一緒に身幅や袖の余りも増えます。もともと短い箱形を保ちたいのか、肩を落として量を出したいのかを先に決めてください。2枚袖という構成だけで腕の細さを判断せず、肩が落ちた位置から袖口までがどこへ来るか、肘を曲げたときにインナーごと動かせるかも見ます。原本の肩線と短丈を残した型だからこそ、丈一つを現代のジャケットへ合わせるより、上半身全体の分量で選びたい一着です。

20's Jacketの背面全体。短い着丈と身幅、シンチの位置を一緒に見てください。
体格別の参考は、実寸を比べる入口にする
当店の表示は34/SS、36/S、38/Mと続きます。スタッフの普段サイズでは、166cm・62kgと168cm・54kgの2名はS・原則最小側から、177cm・71kgはMから比較を始めます。前の2名なら34/SSと36/S、177cm・71kgなら38/Mが比較開始の候補です。20'sでは将来の縮みを考え、その一つ上も並べ、肩幅・身幅・着丈・袖丈を手持ちの合うジャケットと比べてください。
166cm・62kgなら胸や腹の厚みを、168cm・54kgなら同じ身幅でも余る分量と肩の落ち方を、177cm・71kgなら着丈に加えて背中と上腕のゆとりを、それぞれ見る必要があります。同じSの2人でも、同じ数字で同じ姿になるとは限りません。縮みの余地と中に着るものまで含めて、隣のサイズと比較すると選びやすくなります。
洗うとき、乾かすときに分けて考えること
TCBは、縮む生地を縫い上げた後、専門の洗い工場で洗い、業務用乾燥機で縮みを出してから製品を届けています。未洗いの一着のような初回収縮を、そのまま家庭で出す前提ではありません。ただ、20'sには将来的な縮みへの個別の注意もあるため、出荷前の洗いで全ての変化が終わるとは考えず、購入時点で適切なゆとりを取ってください。
日常では、汗や汚れの付きやすい襟と袖口も見ながら洗います。製品の洗濯表示を優先し、濃い青と形を保ちたいときは裏返して、冷水と濃色衣類に適した穏やかな洗剤を使うのが基本です。洗剤は表示量を守り、洗濯機では弱い水流を選びます。濃色のうちは、淡い衣類と分けてください。
洗い終えたら身頃と袖の形を整え、風通しのよい日陰で自然乾燥させます。20'sには革パッチも付くので、日常の手入れでは熱乾燥を繰り返さない方が、寸法と付属の変化を抑えやすくなります。乾燥機で狙った身幅だけを小さくする、という調整は勧めません。

20's Jacketの裾とシンチ。中心を継ぐ背中も、洗って着込む中で縫い目の表情が加わります。
裏返すのは、表へ不自然なしわや筋が付くのを抑えるためでもあります。一方、縫い目のうねりや耳の強いアタリを優先して、表のまま洗う楽しみ方もあります。正解を一つに絞るより、きれいな青を保ちたいのか、荒い縫い目の表情を強めたいのかを考えて選んでください。尾錠の針と金属の角は、洗うときも着るときも、他の素材へ当たらないよう収めておきます。
30'sとの違いと、20's Jeansで組む上下
30's Jacketと迷う場合は、同じ1stという括りから離れて見てください。20'sは12.5oz、四角く横へ開く襟、丸いフラップ、角で止めずに回るポケットの運針。30'sは14.1oz、先へ角度の付く襟、角のあるフラップ、旋回して内側に三角ができるステッチです。袖も20'sの2枚袖に対して30'sは1枚袖、革ラベルは20'sの山羊革と30'sの鹿革という違いがあります。

比較対象は30's Jacketです。20'sの横へ開く襟・丸いフラップと、正面の形を見比べられます。
さらに、20'sは短めの着丈と箱形、30'sは太いアームホールと生地の強い張りが、着たときの違いになります。軽さを求めるのか、厚い生地の立つ輪郭を求めるのか。襟を閉じた顔と、横から見た袖の量まで比べると、どちらが自分の手持ちに加わる一着かが見えてきます。
同生地でそろえるなら、ベルトループ・サスペンダーボタン・シンチバックが共存する20's Jeansです。短いジャケットと、腰から腿に分量のあるジーンズが組み合わさり、20年代の上下一体の輪郭を作れます。白や生成りのTシャツを見せれば青の間に明るい面が入り、前を閉じると襟と小ボタンが主役になります。
上下が同じ生地でも、袖と膝では動きも擦れ方も違います。無理に同じ色へそろえるより、着る日々の差まで含めて育てられる組み合わせです。春秋の羽織りとして、冬にはコートの内側へ。12.5ozの扱いやすさと、見込むほど発見がある細部を、長い期間楽しんでいただけます。
FASCINATEでは、大阪・心斎橋のFASCINATE_THE R、京都・河原町のFASCINATE KYOTOとオンラインストアでTCB JEANSを取り扱っています。現在のサイズ実寸と店舗在庫は、下の商品詳細からご覧ください。お手持ちのTCBとの比較や、縮みを考えた二つのサイズで迷う場合も、ご相談いただけます。
TCB JEANSの商品一覧
素材、形、着用サイズを見比べて、日常で育てたい一本・一着をお選びください。
担当:FASCINATE_THE R バイヤー 森崎
