TCB S40's Jeans:不揃いを再現する工場の仕事と、14ozの色落ち

TCB JEANS(ティーシービージーンズ)。
左右別のポケット型紙、鉄の隠しリベット、左右で違う縫い線。ある一本の癖を量産へ移す工程から、濃い14ozの育ち方とサイズ選びまで。

2026-10-16

経年したTCB S40's Jeansとデニムジャケットのセットアップ
目次

TCB JEANSのS40's Jeansは、大戦期のS501XXを元にした14ozのジーンズです。青黒い生地、左右で形の違う後ろポケット、杉綾の袋布。正面からは無骨なストレートに見えますが、裏返して縫い線をたどると、左右で異なるミシンや、わざわざ二度に分けた工程まで見えてきます。

大戦モデルらしさを、月桂樹ボタンと部品の省略だけで説明するには惜しい一本です。TCBが残そうとしたのは、あるヴィンテージに生じた形と縫い方の癖。その不揃いを毎回同じように作るために、工場がどのような準備をしているのかを見ていきます。

色落ちしたTCB S40's Jeansを正面から見た着用姿

腰から裾へ素直に落ちる形。以下の色落ちした着用写真は経年した個体で、新品の色や現行タブ色とは異なります。

左右で別の型紙を作る、後ろポケットの再現

後ろポケットを二つとも正面から見ると、輪郭が同じではありません。TCBは元にしたヴィンテージから、右と左を別々にトレースしています。普通なら一つの型紙を反転させて左右を取れる場所に、二つの型紙を用意しました。

これは、当時も左右別の型紙で裁断していたという説明ではありません。TCB自身、元の工場が最初から曲線的なポケットを設計したとは考えていません。裁断、折り込み、縫い付け、そして長い着用の結果として残った不揃いを、現在の製品の形として拾い直しているのです。

TCB S40's Jeansの左右の後ろポケットと革パッチ

アイロンをかけても、歪みを消さないための型

形を写しただけでは、縫製の途中で整ってしまいます。ポケットは縫い代を内側へ折り、アイロンで押さえてから身頃へ付けるためです。TCBは、そのアイロン掛けに使う型も作り、輪郭の丸みや歪みが消えないようにしています。

「ラフに縫う」というと、職人の気分で崩しているように聞こえるかもしれません。この一本では、残したい崩れ方を型紙と道具へ落とし込んでいます。縫いやすく整える準備と、整ってしまわないための準備。その向きの違いに、S40'sを作る面白さがあります。

濃色と色落ちしたTCB S40's Jeansの後ろポケットを並べた細部

一筆書きにしない縫い線と、ポケットを越える縫い始め

ポケットの縁を目で追うと、角が鋭く決まらず、線が大きく回り込む場所があります。隠しリベットを避ける線、いったん戻る線、ポケットの輪郭より上へ伸びる縫い始めまで、元個体の通りです。

元の縫い線が一続きではなかったため、TCBも二つの工程に分けて縫っています。ここを一筆書きで滑らかに仕上げれば手間は減らせますが、そうすると、見ようとしていた一着の表情が変わってしまう。製造の効率だけでは決められない箇所です。

TCB S40's Jeansの後ろポケットの湾曲した縫い線を新品と経年個体で比較

TCB S40's Jeansの後ろポケット上端に残る返し縫いの細部

隠しリベットを見るため、実物のポケットを部分的に解く

外から見えない補強も、同じように実物からたどっています。TCBはヴィンテージの後ろポケットを一部解き、鋲の形と位置を調べました。出てきたのは、丸く張り出した、いわゆるUFO型の鉄製リベット。元の個体では、その位置が低く付いていました。

この型では、カンドメ専用ミシンによる隠し補強を入れず、ステッチで仮止めしてから鋲を打ちます。鋲を付けた後にポケットを下ろし、表から縫い付ける。先に打つ鋲の場所が変われば、最後に針を通せる線も変わります。先ほどの湾曲した縫い線は、ポケットの形だけで独立しているわけではありません。

元の個体で鋲のある角が擦り切れていたことまで、TCBは紹介しています。隠せば表から消えてしまう部品でも、厚みがあり、生地と一緒に擦れ続ける。新品では目立たない立体が、何年も穿いた後に輪郭を見せる場所です。

濃色と経年したTCB S40's Jeansの後ろポケット上端と革パッチ

銅色に見える鋲は、鉄に銅メッキをしたもの

S40'sのリベットを、銅の塊と見間違えないようにしたいところです。TCBは実物の鋲に磁石が付くことを確かめ、鉄を銅メッキしたリベットを採用しています。20'sや50'sで使う銅のリベットとは、芯の材料が異なります。

色が変わる、表面のメッキが擦れる、鉄の部分に錆が出る。生地の色落ちだけを見ていると見逃しやすい、小さな経年変化です。物資統制の下で材料を変えながら、外観は銅色に仕上げる。その実物の選択を、見える色と中身の両方から写しています。

左右の脇でミシンまで違う、説明しきれない縫製を残す

腰から前ポケットの脇へ下りる押さえステッチは、児島の工場では「クインチ」と呼ばれます。S40'sの元個体では、右と左で糸の太さと運針が違い、左側だけがチェーンステッチでした。TCBも二台のミシンを使い、左右で設定を変えて縫っています。

なぜ当時そのようにしたのか。TCBは、ここには納得できる理由が見つからないと書いています。工場の合理化、応急処置、担当者の違い。つい物語を足したくなりますが、原因が分からないまま残っていることも実物の情報です。左右を揃えて辻褄を合わせず、その差を製品へ残しています。

クインチという呼び名にも、工場の言葉の面白さがあります。井上さんが先輩から聞いたのは、帯から九インチという縫いの指示が「クインチ」と呼ばれるようになったという説。当時勤めた工場の指示書もインチ表記だったそうです。語源が確定した説明ではありませんが、服の仕様と、児島で仕事を伝える言葉とのつながりを感じる話です。

経年したTCB S40's Jeansの脇の押さえステッチと後ろポケット

腰から脇へ下りる押さえと、別に走る外脇の線。外からの運針を見た後、裏返して縫い目の構造まで追うと、見る場所が増えます。

鋲を打たないためのテープと、別々に縫うインシーム

コインポケットには補強のリベットがありません。TCBでは、他のジーンズを作る際の習慣で、ついここにも鋲を打ってしまうことがあったそうです。その対策が、一着ずつ該当箇所をテープで覆うシートでした。鋲を省いた一箇所を守るために、現代の工場では一手間増える。再現の仕事がよく伝わる逸話です。

内股の縫いも、地縫いとオーバーロックを一度で済ませていません。6番手の糸で地縫いした後に、縫い代の端をかがる二工程です。さらに表から一本針のチェーンステッチを入れます。巻き縫いにはUnion Special 35800G、裾には43200Gを使い、元個体を読み取った工程を積み重ねています。

古い型だから、すべてを太く広く縫えばよいわけでもありません。TCBが紹介する巻き縫い幅は1/4インチ。部位ごとの縫い幅と順番を追うことで、単に無骨な見た目以上の違いが見えてきます。

14ozのTCB WW2は、色落ちの先から逆算した生地

生地は、S40'sのために作った「TCB WW2」。イースタンメンフィス、ニューオーリンズ、テキサスの三種の米綿を配合した14ozです。ヴィンテージから糸を解き、撚りの回転数やムラの形を調べたところから開発が始まっています。

TCB S40'sのデニム表面に見える毛羽と小さな白い節

綿の白さ、葉かす、経糸と緯糸の撚り分け

ここで合わせたのは、糸の太さだけではありません。綿をきれいにする工程が今ほど徹底されていなかった頃を想定し、葉かすや種子がわずかに残る綿を使い、ネップのある強撚糸に仕上げています。触れた時のゴワッとしたコシも、この糸作りと関係しています。

綿自体も真っ白にせず、クリーム色を帯びたくすんだ色へ。経糸はインディゴに染めるのだから差が隠れるのではないか、という井上さんの疑問に、生地の作り手は、色が落ちた時に綿の白さの差が出ると答えたそうです。緯糸にも同じ色味の綿を使いますが、分析に合わせて撚りとムラの形状は経糸と変えています。

TCBが想像した背景には、軍需が優先される中で短い繊維を使い、それを糸として成立させるために強く撚ったのではないか、という見立てがあります。これは特定の工場の使用綿を史料で断定する話ではなく、触れた実物のコシをどう再現するかにつながる、作り手の考察です。

濃い色と白い芯が、点から線へ変わる

染めは、硫化などを混ぜない濃いインディゴ。TCBは開発時、通常より濃いロープ染色の浴と、強撚糸の白く残る芯について説明しています。狙ったのは、黒に近い新品の色そのものより、穿き込んだ後に濃い部分と白く擦れた部分が作る強い差です。

着用が進み始めたS40'sを、TCBは粒状の色落ちとして紹介しています。表面の点が白く現れ、それらがつながりながら印象が変わっていく。ヒゲや膝裏のハチノスだけでなく、平らな腿の面、ポケットの輪郭、ループの山も見ていただきたい生地です。

TCB S40's Jeansの濃色と経年個体のベルトループと腰帯

月桂樹ボタン、杉綾の袋布、鹿革も一緒に変わる

トップは鉄素地の月桂樹ボタン。S40'sでは内部にS字ワイヤーを入れた仕様を別注し、防錆用の仕上げを省いています。最初は銀色に光る部分にも、使ううちに錆が出る作りです。Late S40'sが採る、S字ワイヤーのない別の月桂樹ボタンとは、同じ柄でも中身が違います。

TCB S40's Jeansの月桂樹トップボタンとドーナツ形のフライボタン

TCB S40's Jeansの開いたボタンフライ

前ポケットを引き出すと、オリーブ系のヘリンボーンの袋布が現れます。Lateのチェック柄ネル、50'sの白い袋布とは、裏返した時の景色がはっきり違う部分です。腰の鹿革パッチ、綿糸の縫い目、ピンクの耳も、それぞれ生地とは違う速さで表情を変えます。

TCB S40's Jeansから引き出したオリーブ色のヘリンボーン袋布

TCB S40's Jeansの腰を裏返した袋布と縫い代

現在のピスネームはインディゴ染めです。以前の赤いタブから、デニムと一緒に色が変わる仕様へ移っています。TCBは2025年3月に変更を案内し、デニムが育つ頃にタブの地色も現れてくるようにと考えています。新品の見た目だけで選ばず、布も部品も変わることを含めて付き合う一本です。

経年したTCB S40's Jeansを斜め後ろから見た着用姿

S40's、Late S40's、50'sをどう選ぶか

濃い14ozと硬いコシから、はっきりした濃淡を育てたい方にはS40's。Late S40'sは13.5ozで、二種類の経糸を混ぜ、より明るい青から出発します。TCBの説明では、S40'sがヴィンテージの色落ちから逆算した生地なら、Lateは当時の新品の色を想像して合わせた生地。0.5ozの差だけでは表せない、開発の入り口の違いです。

形を比べるなら、同じ表記だけでなく腰の実寸を近づけてみます。メーカーの洗い済み個体例でS40'sのW31は内径77cm・股上33.5cm・ワタリ29cm、LateのW30は78cm・29.5cm・29.5cm。腰が近い例でも、S40'sの股上は4cm深く、腿の幅まで同じになるわけではありません。表記を一つずらせば必ず同じフィットになるという換算ではなく、腰をどこで留める形かを見るための比較です。

経年したTCB S40's Jeansの正面の腰と深い前股上

経年したS40'sの腰と前股上。深い股上が、腹部から腿へどのようにつながるかも見てください。

50's Jeansも13.5ozですが、ジンバブエコットンを使う別の生地です。袋布は白く、S40'sのような左右異形ポケットや月桂樹の部品を中心にした選び方とは異なります。形と生地を素直に楽しむ50's、特定個体の縫いの癖まで追うS40's、袋布と複雑なムラを味わうLate。手持ちの一本に何を足したいかで比べると、候補を絞りやすくなります。

詳しくは、Late S40's Jeansと、50's Jeansの三つの形もご覧ください。

サイズ選びは、洗い済みの腰・尻・座った時の余裕から

当店で扱うS40's JeansはOne Washedです。未洗いの生デニムをこれから大きく縮める前提で、表記インチだけを上げる選び方とは分けて考えます。基準にするのは、今ちょうどよく穿けているジーンズを洗い、乾いた状態で測ったウエスト、股上、ワタリです。

深い股上のパンツを低い位置へ無理に落としたり、腰を強く絞って尻の分量を潰したりすると、この型の見え方が変わります。まず穿きたい腰の高さでトップボタンが留まるか。次に椅子へ座って腹部と尻が引かれないか、前ポケットへ手が入り、ももの付け根へ横皺が強く集中しないかを見ます。ベルトで支える余裕と、ただ腰が余りすぎる状態も分けたいところです。

経年したTCB S40's Jeansを横から見た腰から裾までの着用姿

メーカーが示すワンウォッシュ個体の例では、W28はウエスト内径71cm・股上31.5cm・ワタリ27cm、W30は75cm・32.5cm・28.5cm、W32は79cm・34cm・29.5cmです。ウエスト平置きの倍と内径は同じ測り方ではないため、数値を比べる時は項目も揃えてください。製品には個体差があるので、最終的には商品詳細の採寸と合わせます。

体格の近いスタッフを参考にする時の出発点

当店の商品ページではW28/SS、W29/S、W30/Mと表示しています。166cm・62kg、168cm・54kgで普段Sを選ぶスタッフは、最小のW28/SSとW29/Sを比較の入り口にします。同じSを選ぶ二人でも、腰と尻に必要な余裕は異なります。177cm・71kgで普段Mを選ぶスタッフはW30/Mから比較し、座った時の腰や腿に余裕が足りなければW31なども見ます。これは実着用の結果ではなく、候補を絞る出発点です。商品表示のS/Mと、普段のS/Mが同じフィットを保証するわけではないので、上記の洗い済み実寸と手持ちの一本を比べてください。

メーカーの実着用例には、183cm・76kgでW34を腰とヒップともタイトに穿いた例があります。これはその方の着方であり、身長体重から全員のサイズが決まる数字ではありません。すでに伸びた一本を持つ方も、履歴の違う新品と同表記だけで合わせず、実寸を比べてください。

裾上げは腰位置とロール幅を決めてから

商品表記の股下は、W28・29がL34.5、W30〜36がL35、W38・40がL35.5です。裾を折る幅、合わせる靴、腰を置く高さを決めると、残したい丈が見えてきます。写真のブーツ合わせなら、裾が靴の上で重なる量と横からの落ち方を一緒に見てください。

TCB S40's Jeansの裾を下ろして黒い革のブーツに合わせた足元

裾上げは、ご購入後にお客様からTCBへご依頼いただく形です。FASCINATEで購入した旨をお伝えください。当店でも、店頭で丈の相談を承ります。切った後の交換条件にも関わるため、腰と渡りのサイズに迷う段階で、先に股下だけを決めないことをおすすめします。

洗濯、追加の縮み、色落ちを別々に考える

当店で扱うのはOne Washedです。TCBでは縮む生地を縫った後、専門の洗い工場で洗い、業務用乾燥機で収縮を出してから販売しています。未洗いの一本を初めて水へ通す時と同じ大きな収縮を前提に、表記だけを上げて買う必要は基本的にありません。ただし、購入後の寸法変化がゼロになるという意味でもありません。

穿いて腰が伸びること、洗って張りが戻ること、熱でさらに収縮することは別の変化です。洗い上がりがきつく感じた時は、完全に乾いた状態で腰と股下を測って比べてください。腰だけを狙って縮めるため高温乾燥へ入れると、股下やパッチまで同時に変わり、ほしかった形に収まるとは限りません。

経年したTCB S40's Jeansの膝裏から裾までの色落ち

経年したS40'sの膝裏と裾。洗う前後を比べる時は、腰だけでなく、膝裏の皺と裾の位置も見ておきたいところです。

日々の手入れは汗と汚れに合わせて洗うことを基本に、縫い付けの洗濯表示を優先してください。濃色のうちは淡い衣類と分け、裏返して冷水と弱い水流で洗います。濃色衣類に適した穏やかな洗剤を使用量通りに使い、洗い終えたら形を整え、風通しのよい日陰で自然乾燥する方法をおすすめします。腰や膝裏の汗、裾に付く汚れを我慢するために、無洗濯の期間を決めておく必要はありません。

裏返すのは、余計な皺や筋を抑えるためです。縫い目のうねりや耳のアタリを優先したい時には、表洗いを選ぶ考え方もあります。どちらも色落ちを止める方法ではなく、表情の出方を選ぶ方法です。出荷前の業務乾燥と家庭での乾燥機の条件は別なので、寸法と鹿革の変化を穏やかにしたいなら、自然乾燥を基本にしてください。

New S40's Jacketと揃えて、別々の変化も楽しむ

New S40's Jacketは同じ14ozのTCB WW2を使い、2026年のリニューアルで着丈・身幅・袖の角度をヴィンテージに合わせたジャケットです。短い上着と、腰から量感のあるジーンズ。上下を揃えると、この時代の形がよく分かります。

次の写真は、経年した旧仕様の上下による色差の参考です。現行のNew S40's Jacketの着用例ではありません。

濃色のデニムジャケットと経年したTCB S40's Jeansを合わせた正面の全身

経年したデニムのセットアップを後ろから見た全身

夏も穿くジーンズと、着る季節の限られるジャケットでは、色が抜ける速さも変わります。上下の色をずっと同じに保つことを目標にしなくても構いません。仕事、移動、洗う間隔によって濃淡が分かれてくることも、同じ生地を二つ持つ楽しみです。

TCB S40's Jeansの後ろ姿と左右のポケットの着用時の見え方

S40's Jeansは、FASCINATE_THE RとFASCINATE KYOTO、オンラインストアで取り扱っています。商品詳細でサイズと現在の在庫を見る。表から形を見て、裏返して工程を確かめ、もう一度穿いてみる。その順番で触れると、不揃いな後ろポケットの見え方も変わるはずです。

TCB JEANSの商品一覧

素材、形、着用サイズを見比べて、日常で育てたい一本・一着をお選びください。

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担当:FASCINATE_THE R バイヤー 森崎


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