Late S40's Jacketは、低く付いた革パッチ、太めのボックスステッチ、百合の尾錠が目印の大戦モデルです。生地は13.5oz。濃い14ozのNew S40's Jacketとは、元にした一着も、糸も、金具も異なります。
このジャケットが選ばれたのは、ネルの袋布を持つLate S40's Jeansへ、同じくらい存在感のある相棒を作るためでした。スウェーデンの友人から借りた実物の、表から見える形と、裏返さなければ分からない糸。その両方から一着を読んでいきます。

Viktorのコレクションにあった、ダウンパッチの一着
TCBは、2020年から作っていたS40'sの後、さまざまな大戦期のヴィンテージを見てきました。同じ時代でも、十本あれば十通りの表情がある。井上さんが次の大戦型を考えたのは、その違いを一つの標準へまとめてしまわず、別の製品として見せるためです。
まずジーンズでは、探していたネルポケットの実物を借りられることになります。ジャケットにも、その一本と組むだけの個性が欲しい。井上さんが思い描いたのが、古着の世界でダウンパッチと呼ぶ、革パッチの位置が低い個体でした。
協力したのは、スウェーデンのヴィンテージコレクターViktor Fredback。相談すると、まさにその一着を持っていたそうです。2024年6月に訪問した際に借りて帰り、Late S40's Jacketのサンプリングが始まりました。先に作った形へ珍しいラベルだけを付けたのではなく、上下の組み合わせから、参考にする実物そのものを探しています。

TCBはこの一着を、資材不足がさらに進んだ大戦後期の姿として捉えています。熟練した縫い手が軍需の仕事へ移り、経験の浅い人が縫ったのではないか、というのも作り手の考察です。残っている粗い縫い目は観察できますが、縫い手の経歴まで証明できるわけではありません。その距離を残しながら、実物にある差を楽しみたいジャケットです。
パッチの低さは、背中の四角い縫い線で分かる
首の内側をのぞくと、革パッチは襟のすぐ下ではなく、大きく下がった位置にあります。平らに置いた時は、前から全体が見えず、一部だけがのぞくほど。メーカーも元個体を見た最初は、パッチが外れてしまっていると思ったと説明しています。

もっと分かりやすいのは背中です。パッチを縫い留めた四角い線が、ヨークの縫い目のすぐ上へ下がっています。New S40'sではこの四角が襟の下の高い場所に来るので、二着の後ろ姿を並べると、同じ一つポケットの1stでも、首から背中へ続く余白の取り方が違います。

パッチが低くなった理由を、便利さや見栄えから説明し直す必要はないと思います。元の一着にあった位置を、そのまま残す。それを知って背中を見ると、ただの小さい長方形が、このモデルを選ぶ理由の一つになります。
不揃いなボックスと、帯の黄色・黒のチェーン
正面のプリーツを留める四角は、少し太めで、大きさも傾きも揃っていません。New S40'sが左右一段ずつずれた配置を写すのに対し、Lateは四角そのものの形の違いが目に入ります。同じ「ラフな縫製」という一言にまとめず、どこが崩れているかを見比べたい部分です。

ボタンの間隔と縦に走るプリーツは、一見規則的です。その上を横切る四角だけが少しずつ違うため、近くで見るほど整いきらない正面になります。飾りのために縫い目を増やすのではなく、ひだを留めるという仕事をする線が、表情にもなっています。
タイガーは、腰帯の内側まで見てほしい
腰の帯を返すと、チェーンステッチに黄色と黒が現れます。TCBがタイガーステッチと呼ぶ部分です。メーカーの拡大解説では、鎖状の縫い目と、黄色と黒が混ざる糸の表情まで見ることができます。
ポケットのふたやボタンを減らした作りの中に、こうした目立たない糸の違いが残っています。戦時期の服をすべて同じ資材、同じ糸で説明できないことが、裏側から伝わる箇所です。着用写真だけで選ぶ時にも、帯の裏を一度見ておきたいところです。
百合の尾錠と、首にくびれを持つ月桂樹ボタン
背中のシンチバックには、鉄にメッキをした百合の尾錠を使っています。元にした実物の尾錠も、長い年月を経たものの割にメッキがきれいに残っていました。布は色が抜け、金具はまだ光る。その組み合わせも含めて選ばれた部品です。

ストラップは長方形に近い輪郭。尾錠を留める三角の縫い目も、きっちり左右対称には整えていません。シンチを絞ると腰の分量が変わりますが、その前に、布の輪郭、尾錠の光、縫い線の形を別々に眺めると、金具だけを付け替えた再現との違いが分かります。

同じ月桂樹でも、S40'sとは違う横顔
前のボタンは四つの月桂樹ボタンです。Lateでは元個体を見て、S40'sのようなS字ワイヤーを入れず、ボタンの首をくびれさせています。表の葉の柄だけを見ると近くても、横からの形と内部の仕様は別です。
くびれは、鉄の使用量を減らしながら強度を保つ工夫だったのかもしれない。井上さんはそう想像していますが、確定した理由ではありません。メーカーの違い、金型の違いという可能性も残ります。分からない原因を埋めるより、実物の横顔に差があったことと、そのために新しい部品を作ったことが大切です。
ボタンメーカーからは、その小さな変更のために本当に開発費をかけるのかと、何度も確認されたそうです。遠目には気付きにくい首の形まで合わせる。その手間が、単に「月桂樹ボタン付き」と書くだけでは伝わらないLateの中身です。
背中は40以上が中央で接いだTバックです。狭幅の布で大きな身頃を取るための接ぎという背景を持つ仕様ですが、40を選べば背中の線だけが変わるわけではありません。肩幅、身幅、着丈も一緒に増えるため、Tバックの好みと体に必要な寸法を合わせて選びます。
現在のピスネームはインディゴ染めです。元にした実物や初期のサンプル写真にある赤いタブと、今の取扱商品の仕様を分けて見てください。デニムが色落ちする頃にタブも変化するよう、2025年から切り替えられています。

Late S40'sの着用時の背中。低い四角い縫い線と、中央の接ぎを別々に見られます。
同じ13.5ozでも、50'sとは別の糸を織る
Lateのデニムはテキサス産コットンで、経糸に二種類のムラ糸を混ぜています。7.5番は弱く長いムラ、6.5番は短く強いムラ。数字が小さいほうが太い綿糸なので、糸の太さと、太い場所が続く長さの両方が違います。緯糸は6番手です。
当時の均一ではない糸を一つの平均値だけで再現してよいのか、という問いから、この組み合わせは生まれました。ムラの山が摩耗し、インディゴの染まり方の差が見えてくると、一種類の経糸だけとは違う面を作ります。13.5ozという重さが同じでも、ジンバブエコットンを使う50'sの生地とは別の設計です。
二種の経糸を使う狙いは、太い縦線を増やすことだけではありません。長く続く弱いムラと、短く強いムラは、長さのリズムも違います。さらにTCBは、糸ごとの染料の浸透差も色落ちへ影響するはずだと考えています。袖のハチノスという大きな模様を見た後、胸や背中の平らな面に目を近づけ、細かい濃淡がどのように混ざるかを見る。糸の設計を味わうなら、皺の強さとは別に、この面の変化も追いたい生地です。

Late S40'sの胸の面。四角やプリーツだけでなく、その間のデニムの細かな表情へも目を向けてください。
二つの経糸の間を探り、G3の調子を合わせる
織っているのは井原の工場のG3力織機です。二種類の糸は、一方だけに適した調整ではうまく一枚になりません。職人は気温、湿度、その日の機械の状態を読みながら、両方が通る設定を探っていきます。番手を二つ指定することと、それを織れる状態へ持っていくことは別の仕事です。
TCBが工場を訪ねた2026年の記録には、部品を取るために置かれた古い力織機も登場します。もう新しく作られていないG3を、別の機械の部品で支える。その維持と職人の調整が、表に見えるムラのある青の下にあります。


明るい青から始める、もう一つの大戦デニム
S40'sの濃い14ozが、色落ちの到達像から逆算して作られたのに対し、Lateは当時の新品の色を想像して、出発する色を合わせています。比べると少し明るい青。分析の中で再現したインディゴには、わずかな赤みを感じることもTCBが説明しています。
どちらがヴィンテージへ近いかという順位ではなく、別の実物から違う答えを作った二つの生地です。Newの黒いような濃さが好きな方と、Lateの青と複雑な糸の表情が気になる方とで、選ぶ理由は自然に分かれます。0.5oz軽いことだけから、柔らかさや着られる季節を決めつけないでください。
色落ちは、洗いを控えた一着だけを見本にしない
Lateが出た直後は、TCBにも長く着た見本はありませんでした。現在は、異なる着方の例が増えています。2026年9月に紹介された約六百日のセットアップでは、ジャケットをジャストで着て、洗濯は二回。袖には強いハチノスが刻まれていました。
一方、同年10月に登場したスタッフのKyunのジャケットは、井上さんから見ると、よりよく洗っていると思われる一着です。強いヒゲは出ていませんが、そのまま進めばこちらのほうが実物らしい表情になるのかもしれない、と井上さんは書いています。洗濯回数まで分かる例ではないものの、強い濃淡だけが目標ではないことがよく伝わります。
同じ生地でも、身体に近い寸法では皺の場所が定まりやすく、ゆとりがあれば動く場所も変わります。そこへ洗い方と着る時間が重なります。一枚の色落ち写真だけを完成形にせず、自分が袖や身頃をどう育てたいかも考えてサイズを選べるジャケットです。

ここからは新品のLate S40'sの着用写真です。上記の六百日着用例やKyunのジャケットではありません。
New S40'sと形は近い、見るべき差は色と細部
Lateは発売時から、袖の付き方や肩の傾斜をヴィンテージに近づけた形でした。その後2026年にS40'sがNewへ変わり、現在の二着はシルエットがかなり近くなっています。旧S40'sの長い着丈と細い身幅を、今のNewの説明へ混ぜないことが比較の出発点です。
New S40's Jacketは、濃い14oz、左右で一段ずれたボックス、高いパッチ、S字ワイヤー入りの月桂樹。Lateは二種経糸の13.5oz、太めで不揃いなボックス、ダウンパッチ、黄色と黒の帯チェーン、百合尾錠です。似た外形だからこそ、内側と横顔まで比べる意味があります。
50's Jacketは胸ポケットが二つの2ndで、裾は両脇のアジャスターです。ポケットの数、背中の調整方法、袖と身頃の見え方が変わるので、一つポケットの二着とは、まず前後の形から選び分けてください。
現行NewとLateは、メーカーの洗い済み個体例でも38の肩幅48・身幅53・袖丈58・着丈58cmが共通しています。この近さを入口に二着を比べれば、色や金具の好みと、必要なサイズを分けて考えやすくなります。ただし寸法例が同じでも、生地は強撚の14ozと二種経糸の13.5oz。肩から脇へ落ちる時の張りや、前を開けた時の見え方まで同じとは限らないので、表の数字と着た姿を往復して選んでください。

横から見るLate S40's。短い身頃、袖の余り、パンツの腰の三箇所を一緒に見ると、幅だけで選びにくい理由が分かります。
胸に合わせて肩を落とす、ジャストと重ね着のサイズ選び
サイズは34〜50。メーカーが示す洗い済み個体の例では、34が肩幅44・身幅49・袖丈55・着丈55cm、36が46・51・56.5・56cm、38が48・53・58・58cm、40が50・55・59.5・59cmです。短い着丈に、広めの肩が組み合わさる形です。
胸まわりが合う寸法で選ぶと、肩が少し落ちます。肩先へ縫い目をぴったり合わせようとするより、まず前を留めて胸と腹部が引かれないか、次に腕を前へ出して背中が張らないかを見てください。袖口と裾の位置まで一緒に見ると、ただ大きいのか、この型らしい余りなのかを分けやすくなります。

三つの体格と、34・36・38を比べる入り口
当店では最小が34/SS、続いて36/S、38/Mです。普段Sの166cm・62kg、168cm・54kgのスタッフは、34/SSと36/Sを比較の入り口にします。同じSでも、胸と腹部、腕の厚みは同じではありません。177cm・71kgで普段Mを選ぶスタッフは38/Mの身幅53cmから比べ、厚手の重ね着なら40の身幅55cmも候補にします。
これらは実着用による一つの正解ではなく、寸法を比べ始める目安です。身長を理由に丈だけを延ばそうとすると肩と袖の分量も増えます。現在着やすいジャケットを同じ方法で測り、前を留めたいインナーを着た状態で比べてください。

メーカーの実着用には、170cm・66kgで38をジャストに着た例があります。往年のアメカジらしく短く収める着方も、スウェットを入れるため一つ上げる着方も選べます。ただ、普段のトップスから無条件で一つ上げるより、何を重ねたいのか、そのためどの幅が必要なのかを決めて上げるほうが、買った後の違和感が少なくなります。

洗い済みから始めるケアと、短い丈の保ち方
当店で扱うのはwashedの製品です。TCBでは専門の工場で洗い、業務用乾燥機で収縮を出してから販売しています。未洗いの生デニムと同じ大きな初回収縮を前提にサイズを上げる必要は基本的にありませんが、購入後の家庭洗濯で寸法が動くことは別に考えます。一度洗ってあるからといって、高温乾燥でも全く変わらないという意味ではありません。短い着丈と袖丈に納得して選び、後から熱で寸法を合わせることを前提にしないことをおすすめします。
洗濯表示を確かめたうえで、余計な筋や色移りを抑えて普段着として洗うなら、裏返しにして単独で、冷たい水と穏やかな洗い方を基本にします。汚れに合うやさしい洗剤を使い、強い熱乾燥を避け、形を整えて陰干しする方法が選びやすい扱い方です。鉄の金具や革パッチも一緒に濡れるので、濡れたまま丸めて放置しないようにしてください。
縫い目のうねりや耳のアタリを強めたい場合、表のまま洗うという選択をTCBは挙げています。裏返すのは、不自然な皺や筋を抑えるため。その目的の違いを知ると、裏洗いだけが正しく、表洗いが失敗という話でもないと分かります。強い色落ちのために汚れを溜めることと、必要な洗濯をしながら表情を見ることは分けて考えたいところです。
Late S40's Jeansと合わせて、後ろ姿まで見る
Late S40's Jeansは、ネル袋布を備え、ジャケットと同じ13.5ozを使うストレートです。短いジャケットが腰のところで終わり、パンツの股上と腿の分量が見えます。上下を同じ時期に着始めても、洗い方と着用頻度で色の差は出るので、その違いも楽しめます。

濃いS40's JeansへLateのジャケットを合わせる着方もできます。元から生地が違う上下なら、新品の時点から濃淡があり、そこへそれぞれの色落ちが加わります。揃いか混ぜるかを決める前に、袖、腰、パンツの裾までを一度全身で見てください。

FASCINATE_THE R、FASCINATE KYOTO、オンラインストアで取り扱っています。Late S40's Jacketの商品詳細と現在の在庫を見る。前の四角、襟の奥、帯の裏、ボタンの横。見る場所を変えるたび、同じ大戦型でもNewとは違う一着であることが分かります。
TCB JEANSの商品一覧
素材、形、着用サイズを見比べて、日常で育てたい一本・一着をお選びください。
担当:FASCINATE_THE R バイヤー 森崎
