Late S40's Jeansは、TCBが二つ目の大戦モデルとして作った13.5ozのジーンズです。正面は素直なストレート。けれど前ポケットを引き出すと、ピンクとグリーンのチェック柄が現れます。この袋布を持つヴィンテージとの出会いが、糸も色も新しく作る出発点になりました。
同じ大戦型のS40'sを軽くしただけの一本ではありません。ネルの袋布をどう織ったか、二種類の経糸をどう混ぜたか、元個体の縫い直しをどこまで残したか。目につく希少な部品から、その下に続く生産の仕事までたどります。

ネルポケットの実物を探し、もう一つの大戦モデルが始まる
TCBがS40'sを作り始めたのは2020年。その後さまざまな大戦期の実物を見る中で、井上さんは、十本あれば十通りの表情があることに惹かれていきます。部品だけでなく、生地も縫い方も一つに決まらない。ならばTCBにも、別の顔を持つ大戦型を加えてよいのではないか、と考えたそうです。
その条件が、ネルポケットの個体でした。古着店やオークションで探しても出会えず、1890年代の製品作りでも協力してもらった古泉さんへ相談します。返ってきたのは、自分は持っておらず、世界でも十五本ほどしかない、という話でした。
これは開発当時に交わされた発言で、現存数を確定した統計ではありません。印象に残るのは、その希少数よりも続きです。相談した数日後、古泉さんから、その仕様の個体の話が舞い込み、購入したという連絡が来る。井上さんは再び借用をお願いし、サンプリングへ進むことになりました。

TCBは、この個体を物資不足が深まった大戦後期の姿と捉えています。いつ、どの工場で、誰がなぜネルを使ったのかまで断定できるわけではありません。それでも、本来表へ見せない袋布が別の素材になっていたという実物の情報から、新しい製品を作る意味を見いだしています。
西脇で織る左綾の袋布、起毛しないネルという選択
袋布は、市販のネルシャツを裁ったものではありません。実物の布を分析し、経糸14番、緯糸14番の左綾で、兵庫県西脇市で織ったTCBのオリジナルです。表地のデニムだけでなく、外から見えないチェック柄のためにも糸と織りを決めています。
元のネルは表面が毛羽立っていました。ただしTCBは、それを最初から強く起毛した加工の結果とは見ず、長く使われた変化ではないかと考えました。そのため、新しい袋布には起毛加工を施していません。穿き、手を入れ、物を出し入れする中で少しずつ表情が変わることを想定しています。

色にも時間の設定があります。デニムの色落ちが進む頃、ピンクやグリーンも実物に近い褪せ方をするよう、染め方を選びました。表のデニムが育っても、内側のチェックだけが新品のまま鮮やかに浮くことを避ける設計です。暖かい裏地を足したジーンズではなく、前ポケットの袋布を再現したモデルであることも押さえておきたいところです。
7.5番と6.5番、違うムラを一枚へ混ぜる13.5oz
デニムはテキサス産コットンを使った13.5oz。経糸に混ぜているのは、7.5番の弱く長いムラと、6.5番の短く強いムラです。綿糸の番手は数字が小さいほうが太いので、平均の太さだけでなく、太い部分がどの長さで現れるかも違います。
TCBが考えたのは、当時の不均一な糸を、一つの番手と一つのムラだけで表せるのか、ということでした。異なる原料が集まり、きれいに紡ごうとしても一様にならなかったのではないか。その想像を、二種類の経糸として製品へ落とし込んでいます。
緯糸は6番手で、ムラの出方は経糸に対して控えめにしています。経糸の太さの違いは、染料の入り方や摩耗の出方にも関わるため、新品の織り面だけでなく、色が抜けた時の複雑さへつながる仕掛けです。同じ13.5ozの50's Jeansとも、原料と糸作りが違う生地です。
膝裏のハチノスや腿のヒゲは、脚の動きと布の余りが作る大きな模様です。それとは別に追いたいのが、腿の平らな部分に現れる細かい色の濃淡。二種の経糸は太さだけでなくムラの長さも異なり、TCBはそれぞれの染料の入り方の差も色落ちへ影響すると見込んでいます。強いヒゲを抑えて穿く場合にも、生地の表情まで均一に薄くなることを目標に作った一本ではありません。

Late S40'sの新品の腰と腿。ヒゲが育つ前の面を覚えておくと、穿いた後の細かな変化も見比べられます。
井原のG3を、二つの糸の間へ合わせる
この生地を織るのは、岡山県井原市の工場にあるG3の力織機です。古い機械を使うという説明だけでは、今回の難しさは見えてきません。7.5番だけに合わせても、6.5番だけに合わせても、二種類を混ぜた一枚はうまく織れない。違う性格の糸の間に、機械の調子を合わせる必要があります。
TCBが2026年に織物工場を訪ねた際に紹介したのは、その日の気温や湿度、機械の状態を読みながら、職人が少しずつ調整する姿でした。番手と配合を指定すれば自動的に出来上がるのではなく、毎日の調整が一反の生地を成立させています。
G3は、すでに新しく生産されていません。工場の外には、部品を取るための古い機械も並んでいたそうです。一台が止まらず動くために、役目を終えた別の一台が支える。レシピと同じくらい、機械と人を維持する仕事が、この13.5ozの生産背景にあります。

同じLate S40'sを横寄りから。糸の話の後は、腰で曲がるところと平らに見えるところを分けて眺めてください。
S40'sは到達する色から、Lateは出発する色から
S40'sの14ozは、黒に近い濃さと強撚の硬いコシから、荒々しい濃淡を作るための生地でした。ヴィンテージの色落ちから逆算する発想です。Lateは、当時の色がよく残る個体やデッドストックを見た経験から、新品の時点の色を想像して合わせていきました。
比べるとLateのほうが明るい青です。開発時には、分析して合わせたインディゴに少し赤みを感じることも、TCBが紹介しています。ただし暗いダイナーのネオン下で撮った写真は、色見本にはならないとメーカー自身が注意しています。画面の青だけで判定せず、同じ明るさでS40'sと並べると、出発点の違いが見えやすくなります。
縫い直しとズレを、一針ずつ残す
後ろポケットの輪郭は、一見するとS40'sほど大きく崩れていません。そこで裏側や小股を追うと、別の癖が現れます。元個体の粗さを一括りにせず、どの線がどうなっているかを部位ごとに再現しています。

平ミシンの仮止めと、隠れたリベット
後ろポケットの上端は、鋲を打つ前に位置を固定します。この個体でTCBが見たのは、カンドメ専用機ではなく、平ミシンで仮止めした縫いでした。そこでLateも、その順番と方法を踏襲しています。
ミシンを移動する手間を省いたのか、とTCBは考察していますが、原因は分かっていません。表から見えないところを一律に補強し直すのではなく、元にした個体の作り方を残す。裏返すと、ポケット上端の縫いとリベットを別々に見ることができます。

一針進みすぎて戻った小股と、合わないヨーク
前立ての下にある小股には、Z字のように進む縫い線があります。その一部や後ろポケットには、一針行き過ぎ、一針戻ってから進み直した元個体の跡を残しています。きれいな線の上に飾りを加えるのではなく、縫う時の動きを拾ったものです。

後ろでは、左右のヨークの合わさる位置がずれています。現代の製品なら縫い直したくなる腰の中心ですが、TCBは揃えずに作ります。中央のベルトループを含めて見ると、一つの線だけを抜き出すより、元個体の少し落ち着かない腰まわりが分かります。

幅広いループに細い二本の線、内側の三角のかがり
ベルトループ自体は約1.5cm幅ですが、二本のステッチの間隔は7/32インチ、約5.6mmです。ループの布幅と針幅は同じものではありません。広い布の中央へ細い線を通すことで、縁まで平らに押さえ込んだループとは立体の残り方が変わります。

内側の縫い代には、三角形を描くオーバーロックが見えます。表で金具やポケットを眺めた後に裏返すと、地縫いと端のかがりが別の仕事をしていることも分かります。目立つパーツだけで大戦型の雰囲気を作らず、内側の縫い線まで揃えた一本です。

月桂樹ボタンの横顔まで、新しい金型で作る
トップの月桂樹ボタンは鉄製です。Lateでは、元のヴィンテージに合わせてS字ワイヤーを入れず、横から見た首にくびれを作りました。S40'sの同じ月桂樹の柄とは、ここが違います。

なぜ首がくびれていたのか。鉄を節約しながら強度を残したかったのか、と井上さんは想像していますが、確定した理由ではありません。金型や製造工場が違っただけかもしれない。それでも横顔の差を写すため、ボタンメーカーには、その違いのために開発費をかけるのかと何度も念押しされたそうです。
発売前の撮影では間に合わず代用していたフライの小ボタンも、製品化の段階で実物に合わせた刻印入りへ変更し、裏の足もドーム型の鉄にしました。発表直後のサンプル写真と、完成した部品が同じとは限らない。モデルのディテールを読む時には、そうした開発の途中経過も役立ちます。

現在のピスネームは、2025年から切り替えられたインディゴ染めです。初期サンプルや元にした実物の赤いタブを、現行商品の色として見ないでください。表地と一緒に色が変わる小さな布も、この一本の経年変化に加わります。
600日穿いた一本は、サイズと洗い方も一緒に見る
TCBが2026年9月に紹介したお客様の例では、Lateの上下を約一年八か月、ほぼ六百日着用していました。ただし、ジャケットとジーンズの育て方は分けています。ジャケットはジャスト、ジーンズは普段のW30から四インチ上のW34。狙いは、腿のヒゲや膝裏のハチノスを強く出しすぎないことでした。
洗濯はジーンズが五回、ジャケットが二回で、初めて洗ったのは両方とも一年後。初回だけ中性洗剤で手洗いし、その後は洗剤を使わず手洗いしたという、その方の方法です。パンツは青さが進み、ジャケットは袖の皺が強く残る。同じ生地でも、寸法の余り方と洗いの条件で結果が分かれた例です。
この一例を、誰にでも四インチ上げて一年洗わないよう勧める答えへはしません。毎日の動き、汚れ方、手持ちの服とのバランスが違うからです。将来の濃淡を考えてサイズを選ぶことはできますが、腰で保てることと、日常で無理なく扱えることを先に置きたいところです。
また、2026年にTCBが色落ちを比較したヴィンテージは、Lateを作るために借りた元の個体ではありません。縫製仕様の一致ではなく、別の大戦期の一本と、色の落ち方が似てきたという観察です。青の濃さだけでなく、糸の不均一さが現れた面の表情を見る比較として読むと、専用生地を作った狙いが伝わります。

写真は当店取扱商品の新品着用で、六百日穿いた個体ではありません。経年例の条件と、買い始める時の形を分けてご覧ください。
サイズはS40'sより浅い股上と、腰実寸を合わせて選ぶ
Late S40'sは、腰から腿に余裕のあるレギュラーストレートです。ただし、同じ大戦型のS40'sと股上まで同じではありません。メーカーのワンウォッシュ個体例では、LateのW30はウエスト内径78cm・股上29.5cm・ワタリ29.5cm、S40'sのW30は75cm・32.5cm・28.5cmです。同じW30でも、腰の高さと腿の分量が変わります。
メーカーは50'sやS40'sと同表記を比較の目安にしていますが、すでに伸びた手持ち品と新品を数字だけで合わせないでください。平置きウエストと内径も別項目です。洗って乾かした手持ち品を同じ方法で測り、腹部、尻、腿に必要な余裕がある候補へ進みます。
もう一歩比べるなら、腰の内径が近い表記を並べます。メーカーの洗い済み個体例では、S40'sのW31は内径77cm・股上33.5cm・ワタリ29cm。LateのW30は78cm・29.5cm・29.5cmなので、腰の数字を近づけても股上には4cmの差があります。Lateのほうが低い位置で留まるなら、その位置の胴回りも違います。単に「S40'sから一インチ下げる」と換算するより、腰を置きたい高さと尻・腿の実寸を同時に合わせるほうが、狙う形へ近づけやすくなります。

三つの体格を参考に、候補を一つへ決めつけない
当店の展開表記ではW29/S、W30/Mです。普段Sの166cm・62kgと168cm・54kgのスタッフはW29/Sを比較の入り口にしますが、同じSでも腰と尻に必要な余裕は異なります。メーカー個体例でW29の内径は76cm、W28は74cm。小さい側も含めて実寸を照らし、腹部が留まるかと座った時の尻の余裕を分けて見ます。
177cm・71kgで普段Mを選ぶスタッフはW30/Mの実寸から始め、腿や腰の厚みによってW31も比べる考え方です。実際にこの型を穿いた結果ではなく、寸法を比べる出発点です。メーカーの実着用には171cm・63kgでW32、180cm・77kgでW36を少しゆったり穿いた例もありますが、それぞれ別の方の体型と好みが反映されています。

裾の太さと、折り返す幅を最後に合わせる
メーカー例ではW29の裾幅20cm、W30は20.5cm。足元まで極端に絞った形ではないため、丈を溜めるか、一度折るかでも見え方が変わります。黒いローカットシューズに合わせた写真では、折り返した裏の白っぽい面と耳が、濃いパンツの裾を区切っています。

当店商品表記の股下はW28〜32がL36、W33〜40がL36.5です。腰の位置と靴、ロール幅を決めてから丈を相談してください。裾上げはご購入後にTCBへ直接ご依頼いただく形で、FASCINATEで購入した旨をお伝えいただきます。当店でも店頭で長さのご相談を承ります。
洗い済みでも、追加の縮みと穿き伸びは別に考える
当店のLate S40's Jeansはwashedです。TCBでは、縮む生地を使った製品を専門工場で洗い、業務用乾燥機で収縮を出してから販売しています。生の一本を最初に大きく縮める前提で、表記だけを大きくする必要は基本的にありません。ただし、穿いて腰が伸びる変化、洗いで戻る変化、熱による追加の収縮は別に考えます。
普段の洗濯は縫い付けの表示を優先し、腰や膝裏の汗、ポケットや裾の汚れに合わせて行ってください。裏返しにして、冷水と弱い水流、濃色衣類向けの穏やかな洗剤を使うのが基本です。洗剤の量は表示に従い、濃色のうちは淡い衣類と分けます。終わったら形を整え、風通しのよい日陰へ干し、自然に乾かす方法をおすすめします。

膝裏から裾まで。洗う前後を見比べる時は、腰だけでなく脚の長さと裾の位置も合わせて見てください。写真は新品の着用です。
この一本には、表のデニムと別に、褪せることを考えて染めたネルの袋布があります。デニムの青だけを変えずに保つというより、袋布も少しずつ変わる製品です。強い熱乾燥を繰り返したり、腰だけ縮めるために乾燥機を使ったりするより、普段の洗い上がりの腰と丈で合うサイズを選ぶほうが確実です。出荷前の業務乾燥と、家庭での温度・時間が違う乾燥は同じ条件ではありません。
六百日例の手洗いや無洗剤は、持ち主の狙いを知る材料です。全員の汚れを同じ方法で落とせるという意味ではありません。また、裏返すのは不自然な筋を抑えるためで、縫い目のうねりや耳のアタリを強めたい場合には表洗いという選択もあります。洗う前後の腰、股下、袋布の色を見比べると、表だけを眺めていた時には気付かなかった、二種類の布の変化が見えてきます。
S40's・50'sとの違いと、Lateのセットアップ
S40's Jeansは、濃い14ozと深い股上、左右別の後ろポケット、ヘリンボーン袋布が主役。Lateはより明るい13.5ozと別の股上、ネル袋布と二種の経糸が主役です。大戦型を一つ持っている方にも、生地の出発点と腰の見え方の両方が違う候補になります。
50's Jeansはジンバブエコットンの13.5ozで、白い袋布を使う別の基準です。重量を揃えて比較しても、糸と綿、腰から裾の形は同じではありません。色と袋布が好きか、今の腰まわりに合うかを、一緒に比べて選んでください。

Late S40's Jacketは、低く付いた革パッチ、太めのボックス、帯の黄色と黒のチェーンが目印です。ネルのジーンズへふさわしい相棒を探して選ばれた別の実物を元に、同じ13.5ozで作っています。ジャケットを後から買い足し、穿き込んだパンツとの濃淡を楽しむこともできます。


FASCINATE_THE R、FASCINATE KYOTO、オンラインストアで取り扱っています。Late S40's Jeansの商品詳細と現在の在庫を見る。前ポケットの内側から始まった企画が、布を織る場所と、現代の工場の縫い方まで変えた一本です。
TCB JEANSの商品一覧
素材、形、着用サイズを見比べて、日常で育てたい一本・一着をお選びください。
担当:FASCINATE_THE R バイヤー 森崎
