作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。
今回はDEVOAの2024SS(春夏)コレクションについて。
製作の過程や創作の裏話についてデザイナー、西田氏にお話を伺いました。
スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。
自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。
スタイリングの中で自然な抜け感を
--- まず、24SSコレクション全体の概要を教えて下さい。
エクリュと黒を色の基調としながら、素材としてはシーズンの事を考えて軽さがある生地感を選んで製作しました。
シルエットに関してはレギュラーフィットを中心とし、カジュアル〜気が利いた綺麗目の商品構成にしてスタイリングの中で自然な抜け感をご提案しました。
--- DEVOAはシーズンテーマを設けず、幅広いテイストをコレクションで用いますが、今シーズンはどのように融合、あるいは共存させたのでしょうか?
デザインを始める前に自分なりのイメージや方向性を決めて毎回スタートはしています。
ただ、デザイン自体に関してはファッションブランドなので世の中の空気感などは取り入れながら今シーズンに限らず単純に私自身が好きなテイストを自身の感覚で作っているに過ぎないと考えています。
--- そういった点に関して考えすぎることはない、ということでしょうか?
そうですね、シーズン内、過去のシーズン商品との相性に関しても多くを考えて制作することは少ないです。
大きなテーマを持ってデザインを徹底する方がコレクションの分かり易さやそのシーズンの方向性などプレゼンテーションとしてのアプローチはより良いインパクトがあると理解していますが、DEVOAとしては発足当時と変わらず、自分自身がブレない程度の簡単なシーズンイメージを持って単純に私自身が着用したいデザインとバランスで制作しています。
感覚としては食事と同じ感覚で、好きなものは大きく変わらないのですがいつもと同じでは飽きてしまう感覚に近いと思います。
--- アプローチとしてはどんな風に考えて作成しているのでしょうか?
ある一定の同じカテゴリーに相当のお金を費やしてきた方々は『普通ではない普通に見えるモノ(服)、普通に見える普通ではないモノ(服)』に対して興味がある方が多いと思います。
私自身も12年前は分かり易くデザイン表現する事が多かったっと思いますが年齢を重ね、より高級な生地を使った服を作る難しさを体感し、哲学はそのままにデザインはよりシンプルに、芯地や縫製を含めた内部構造処理にも多くの拘りを持つ様に進化してきたつもりです。
事実、人間が作る拘った商品には製作者の人柄や人間性が現れます。
これはファッションだけの話ではなく、商品そのものに対する考え方や気を遣っている部分や思いやりと言った事はその商品を通じて製作側の人間性も感じとる事ができます。
--- 人となりがでるのはその通りですね。
些細な事に気づかなければより良く進化することは出来ないですし、思いやりが無ければ着用者や使う側の事を考える事は出来ません。
少し強い表現になりますが弊社スタッフにも『気づきこそが人の価値』と言っています。
知識や技術は学ぶ事はできますが礼儀や思いやり、気づきはなかなか学んでも身につける事が難しいからです。
デザインとは話が脱線してしまいましたが商品をデザインし商品を製作すると言う事は、単に洋服の話だけでは無く料理をする人やプランナー、美容師、あらゆる接客業・製造業も含めて結局やる側の考え方と思いやりが1番重要だと言うことを伝えたくて長くなってしまいました・・・
私自身にも日々言い聞かせながら、お客様の着用感を思い浮かべて制作に励んでいきたいと思います。
24SSの単純なシーズンに対してのデザインアイデアのインタビューなのですが脱線して大変失礼しました。
--- 24SSコレクションの全体的なシルエットの傾向や特徴はどんなところでしょうか?
トップスに関してはレギュラーフィットを中心として制作しています。
パンツに関しては定番のスリム、ジョガー、カーブパンツ(クワガタのツノのような形)、ルーズクロップドを中心として現在ファッションの主流であるバギーパンツを制作しました。
バギーパンツに関しては生地によって大きく見え方が変わるので生地分量の感覚がとても難しかったです。
裾に関してもDEVOA独自のモーニングカットで制作していますので特徴などは実際の商品を確認して頂き、販売員からの接客を楽しみにして体感していただきたいです。
---ブランドの哲学をもとに[研究発表]というかたちを取られていますが今期の研究とはどんなものなのでしょうか?
縫製面では天然繊維同士の圧着縫製での製品を制作しました。
圧着する材料も海外から取り寄せて何度もテストを重ねて製品までこぎつけた感じがありました。
防水性といった観点ではなく縫い代の処理、芯地などの剪定など多くを学ぶ良い機会になりました。
毎回ではありますが生地とパターンに合わせた芯地と縫製はその都度変える必要がある場合があるので今回だけには限らないです。
今後のDEVOA製品の商品の品質向上としてとても良い機会や次回の宿題の様な事がたくさん見つかったと思います。
---今回のDEVOA EXISTでは、TEIJINと開発した素材を用いていますが、どんな特徴がありますか?
単純にファッションでは使われない素材や高機能な素材を見つける事ができたのでお願いして制作していただきました。
特にウェーブロンというジャージ素材は元々ウエディングドレス用の生地です。
防水性といった観点ではなく縫い代の処理、芯地などの剪定など多くを学ぶ良い機会になりました。
毎回ではありますが生地とパターンに合わせた芯地と縫製はその都度変える必要がある場合があるので今回だけには限らないです。
今後のDEVOA製品の商品の品質向上としてとても良い機会や次回の宿題の様な事がたくさん見つかったと思います。
incarnationとのコラボレーションシューズも制作
今回incarnationとのコラボレーションでシューズも制作されました。
コラボレーションに至った経緯を教えてください。
COVID-19が影響する前まではParis展示会会場をincarnationとシェアさせていただき、一緒に展示会を行っていました。
海外取引先は多少ではありますが一緒の店舗もあり、ご一緒できた期間はとても刺激をいただき楽しく展示会をする事ができました。
incarnationのデザイナーである小川様と革製品の事など相談したり教えていただいたり話をする中で、小川様の靴製品の魅力に純粋に惹かれ弊社から制作をお願いいたしました。
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今回incarnationが革及び製品制作、デザインは西田さんがそれぞれ担当されたとのことですが、商品開発についてはどんな意見交換をしたのでしょうか?
また、デザインについては小川さん側から何か要望はありましたか?
今回の制作ではデザインと靴の木型は弊社が提供し、制作に関しては沢山の我儘も含め小川様にお願いしました。
色とソールの形状なども含めて難しい事をお願いしたのですが真摯に対応していただきとても満足のいく商品が完成したと思います。
サンプルをパリで出張の際に着用していたのですが、ホテルなど行く場所それぞれでどこの靴なんだ?と声をかけられました。
デザインはシンプルですが個性ある商品が出来たと思います。
サンプルの際には無かったのですが靴紐もオリジナルで制作しています。
GORE-TEXの糸を使い堅牢度が強く結び目が解けにくい紐を製作しましたので実際の商品をお楽しみにして頂けましたら嬉しいです。
短靴の靴紐は綿紐とGORE-TEXの糸を使ったオリジナル靴紐と2種類付属します。
---今年はこのコラボレーションやISO(位相)も含め、いろいろなデザイナーとの共作が多く発表されますが、それらを通じたデザイナーとの交流やともに仕事をした経験は、西田さん自身にどんな影響を与えましたか?
コラボレーションが重なった経緯は私自身からの提案なのですが偶然やタイミングが重なった感じです。
ISOの経緯に関しては別の機会に詳しくご説明しますがincarnationの小川様とは展示会をご一緒していなければ今回のコラボレーションはなかったと思いますし、不思議なご縁に私自身は毎回助けられています。
単純な制作に関しても多くの事を学ばせて頂きました。
--- 今季のコレクションを通じて、DEVOAの作品を着る人に伝えたいことはありますか?
毎回、同じような事ばかり書いている様で恐縮です。
シーズン毎に商品自体は製作していますが多くは変わってはいないと自分自身では思っています。
自分の歩幅に合わせて出来る事を確実に継続する事が最も難しいのでブランド発足から16年目ですが今も夢の途中です。
毎シーズンではありますが沢山の洋服がある中でDEVOAを選んで頂けるお客様には感謝しております。
自分自身の為にも、会社を守る為にも継続して楽しんで努めます。
心から感謝を込めて。