CHIAHUNG SU デザイナーインタビュー vol.2
創作の根幹と24SSコレクション
2024年3月28日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側に迫るデザイナーインタビュー。
今回はFASCINATE_THE Rで取り扱いのある台湾のブランドCHIAHUNG SU(チャンホン・スー)のデザイナー蘇家紘(チャンホン・スー)氏にお時間をいただきインタビューを行いました。
第2回は、クリエーションの根幹となる制作の手法や24SSコレクションについてお話を伺いました。

蘇家紘(チャンホン・スー)

台湾で服作りの基礎を学んだのち、数年間メンズスーツのオーダーメイドに従事、その後渡英してロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでメンズウェアのデザインを学び、ファッション・デザイン・テクノロジー修士号を取得。

2020年にデザイナー自身の名前を冠したブランドを設立し、ロンドンコレクションでデビュー。


FASCINATE_THE Rを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。


創作の根幹にある表現へのこだわり

--- あなたのコレクションはまず生地制作にあります。特徴について教えてください。

私が主に使っているのは台湾の原住民であるタイヤル族が手織りで制作した生地です。


彼らは、すべて自分たちで植え、収穫し、さらし、撚り、手で撚り、昔から伝わる手法と古い機械を使って生地に織り上げます。


作り方はタイヤル族の中でも女性にだけ伝わっているので、どうやって作るかは教えてもらえないので、どんなものが欲しいかを伝えて織り方や柄の構成を相談しながら作っています。


作れるのも16人ほど、生地によっては1時間で2. 5センチずつしか作れなかったりするのですが、生地には伝統的な織り柄があったり、 不均一さがあったりして、手作業の痕跡や受け継がれてきた歴史が垣間見えるところも好きなところです。

--- 彼らとは現地に行って直接やりとりをするのですか?

彼らの居住地域は台湾の北部から中部にかけての山間にあって、少し遠いですが、生地制作の相談は基本的に現場に行ってします。


生地や糸の見本を見せてもらって、テクニックをミックスしたり、糸を変えてもらったりするので、対面でないとなかなか難しいからです。


やはりお互いの理解を深めるには直接コミュニケーションをとることが重要だと思っています。

--- ファブリックを選ぶ基準はどんなところでしょうか?

タイヤル族と共同開発している生地の他にも、日本やイタリアでも全てオリジナルで制作するのですが、ブランドのテイストや自分の感性と同じくらい、生産者の方と価値観が合うかどうかで最終的な決断をします。


私達の作りたいものに対して共感してくれるか、自分たちの考えに賛同してくれるかどうか、です。

--- 独特の色合いもブランドの特徴の一つですが、どのように作っているのでしょうか?

私たちのチームには専属の染色職人が2人いて、全てアトリエで染色しています。


色の出し方はすごく繊細な作業なので、染料の調合、染色の回数、漬け込みの時間などが少し違うだけで色合いに大きな違いがでますし、生地や染料の産地、季節によっても、同じ素材でも異なる影響を与えることがあります。


さらに、供給を維持できることを確認する必要があり、素材を準備してから実際に衣服を作り始めるまでに数週間かかる場合があったりと苦労する場合が多いです。

--- くすんだ色合いも特徴ですね。

こういう色合いの表現は天然染めの特徴の1つです。


鮮やかな色も作ったことがあるのですが本当に難しかったですね。


ただ、中華圏には旧正月にそういう色を着る伝統があるので、そういう色を気に入ってもらったりしていて、そういう文化的な側面もあります。

--- 色の作り方ではどのようなことを考えていますか?

かなり多くの実験が必要になるため、間違いなくより多くの時間がかかりますが、天然の染色工程で得られる色合いが私が求める色であると考えているため、これを続ける価値があると考えています。


テストを繰り返しながら色を作っていくのですが、その過程での発見を次のシーズンに活かせることも多く、これまでのレシピは全て残してあります。


このレシピはクリエーションにとって非常に重要で、ブランドの財産です。

--- 24SSのコレクションのテーマを教えてください。

約200年程前の台湾や日本、東南アジア、オーストラリアやニュージーランドなど、それぞれの持っていた独自の文化やスタイルが、移民によって台湾に流入し、それが混ざりあいながら融合して今に至るまでの過程を表現しました。


当時は他国への移動もかなり盛んに行われ、この国に多様性のある文化をもたらしたターニングポイントの一つのポイントになった時代であることに着目しました。

--- どういうものからインスピレーションを受けて、このテーマに設定したのでしょうか?

根本的なインスピレーションは台湾文化の元々の起源の研究からです。


民族の文化も歴史も変わっていく過程を探る中で、今シーズンはここに焦点を当てました。

--- いろんな国の原住民の昔のスタイルをどういうふうにデザインに取り入れたのでしょうか?

例えばボタンではなく紐で結ぶスタイルであったり、ライニングはヴィンテージファブリックであったりというところが代表的な部分です。


それと、生地のテクスチャの表現や染料もかつて使われていた漢方を調べて同じものを使って染めています。


これらを当時のスタイルのニュアンスを感じ取れるような形でモダンなアイテムに落とし込みました。

---染料はどういったものなのでしょうか?

茜、ザクロ樹皮、インク樹皮、マホガニー、グアバの葉など、地元産のオーガニックハーブと農園から古代の技術で作られた最も伝統的な染料を使用しています。


本当はもっと昔からあるとは思うのですが、記録に残っているのは一番古くて400年前。


染料や技術については、日本語の資料なども翻訳して参考にしました。

---新しいコレクション製作で印象に残っていることはどんなことでしょうか?

タイヤル族との創作関係は今シーズンも継続していますが、彼らは自分たちが今まで続けてきた生活が好きで、ゆっくりした自由な性格なので、お願いした生地が出来上がるのはギリギリになることが多いです。

今回イタリアでも手織りの生地を開発したのですが、自分たちの仕事が取られると心配したのか、今は仕上がりも早かったことです。(笑)

彼らとの関係はこれからも続けていきますし、そんなことは絶対ないのですが。

オーダーしていただいたこのニットシャツも原住民さんたちの布を使っていて、柔らかくていつでも着用できるので、これが一番気に入ってます。

---今後ブランドをどういうふうに展開していきたいですか?

おかげさまで取り扱っていただいているお店も増えてきて、毎シーズンクリエーションの質が問われていると感じています。

今のシーズンは前のシーズンよりも、次のシーズンは今のシーズンよりもクリエーションの質を上げていかないといけないと感じています。

そこに楽しさを感じながら毎年成長しながら、でも自分たちの哲学や根幹は変えずに続けて行きたいと思っています。

---ブランドを通じて伝えたいことはどんなことですか?

私たちは、少数民族の文化、残された歴史の遺産、失われつつある職人技を後世に残し、ファッションという媒体を通じて台湾の歴史的な魂と物語を、私たち自身のアイデンティティを表現する衣服を作ることを目指しています。

性別や年齢を問わず、私たちの作品をいろんな国の人が着ることで、その国の人たちに台湾伝統の技術や文化を体感してもらいたいと思っています。

---今回は長い時間お付き合いいただきありがとうございました。

24SS(春夏) コレクション