ZIGGY CHEN デザイナーインタビュー
「ずれと分離」でつくる、次への土台ZIGGY CHENが語る 2026-27AW「DISSPARATION」
2026年10月19日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー。今回は、上海を拠点にするZIGGY CHEN(ジギーチェン)の2026-27AWコレクション「DISSPARATION」について。
「DISSPARATION」は、「ずれ」を意味するDislocationと、「分離」を意味するSeparationを組み合わせた造語です。ずらして、離す。その相手は、ZIGGY CHEN自身のこれまでのコレクションでした。ブランドにとって継続性は大切なはずなのに、なぜ今季、過去の自分たちから距離を取ろうとしたのか。
今回は書面でのインタビューです。30の質問をお送りし、デザイナーのZIGGY CHEN氏から英語で回答をいただきました。テーマの成り立ちから、生地、柄と色、仕立て、パリでの発表まで。回答を日本語に訳し、話題ごとに並べ直してお届けします。

DESIGNER PROFILE
ZIGGY CHEN(ジギーチェン)
1969年、中国・武漢生まれ。中国紡織大学(現・東華大学)でファッションデザインを専攻し、1994年の卒業後は同大学で教えながらキャリアを始めました。1999年にShanghai Shiyi Co., Ltd.を設立し、2012年に自身の名を冠したブランド、ZIGGY CHENを立ち上げています。
上海のアトリエを拠点に、伝統と現代の出会いを軸として、素材の研究、生地、ディテール、ボリュームに重きを置いた服づくりを続けています。2012年秋冬に最初のコレクションを発表し、10年以上にわたってパターンとフィットの開発を重ね、着やすさを磨いてきました。
CONTENTSこの記事の目次

CHAPTER 01
「説明のためというより、開発を進めるための道具」——造語「DISSPARATION」の成り立ち
まず、今季のテーマと、それを選んだ理由を教えてください。
今季のテーマを考えるうえでいちばん大事にしたのは、これまでのシーズンのテーマとはっきり区別することでした。新しいコレクションを考えるとき、テーマが変わること自体が、これまでとは違う考え方へ自分を連れて行ってくれるようにしたかったんです。ですから、テーマの名前を決める前から、より抽象的で概念的な方向へ進むつもりでいました。
実のところ、このテーマはコレクションを説明するためのものというより、私たちの社内での開発を進めやすくする道具として立てたものです。
「DISSPARATION」は造語だと伺いました。どの言葉を組み合わせ、どんな意味を込めたのでしょうか。
「Dislocation(ずれ)」と「Separation(分離)」を組み合わせた言葉です。
ずれと分離という発想は、今回のコレクションをここ数年のものとは違うものにしたい、という思いから来ています。それは生地の選び方と作り方に始まり、デザイン、構造、クラフツマンシップへの向き合い方にまで及びます。
ブランドにとって、継続性はふつうとても大切です。ただ今季は、これまでのコレクションから、ある種のずれと分離を作り出せないだろうかと考えました。この2つの言葉を選んだ、もともとの理由はそこにあります。
その着想は、どこから来たのでしょうか。
もともとの意図は単純で、これまでのすべてのコレクションとの違いをよりはっきりさせ、新しいことをいくつか試したかった、ということです。コンセプトが最終的に比較的抽象的なものになったのは、そのためです。
この考え自体は、しばらく前から頭の中にありました。今季がそれにふさわしいシーズンだと判断した、というだけなんです。
もちろん、この抽象的なテーマの下には、もっと具体的なムードボード〔注:イメージの写真や素材を集めて貼ったボード〕があります。1980年代、実用性と機能性、重さと男性らしさ、抽象的なテクスチャーなど、複数の要素が入っています。
テーマは、制作のどの段階で決まるのでしょうか。最初からあるのか、進めるうちに形になっていくのか、どちらですか。
コレクションの計画を始める前に、たいていはもう、漠然としたアイデアが頭の中にあります。開発が一歩ずつ進むにつれて、それが少しずつはっきりしていきます。
全体像がはっきりするのは、ふつう、すべての生地が決まったあとです。スケッチやパターン、服の開発に入ってからも修正や調整はありますが、最初の方向が変わることは基本的にありません。

CHAPTER 02
「変化がないこと自体が、退屈なんです」——古くて新しい、という軸
ブランドとして「古くて新しい」という軸を守ってこられました。その軸は、今季のテーマとどう関係しているのでしょうか。
古くて、同時に新しい。その軸は、シーズンごとにテーマがどう変わっても変わりません。
実際のところ、「古くて新しい」は、意識して表現しよう、説明しようとしているものではないんです。根本的には、私個人の美意識から来ています。
個人の美意識が土台にあるなら、変化はいろいろな形で起こせます。生地の組織を調整する、新しい染め方を試す、パターンの構造を変えて磨く、縫製の技術を試す。そうやって、さまざまな段階で実験ができます。
変えすぎるのはブランドにとって必ずしも良くない、と考える人もいます。でも私にとっては、変化がないこと自体が退屈なんです。
着想の手がかりとして、実際に手元に置いているものはありますか。写真でも、生地でも、本でも構いません。
長いあいだ私のそばにあるものが2つあります。1つは、宋代の絵画の全集(The Complete Collection of Song Dynasty Paintings)の全巻。もう1つは、自分で撮った拙政園〔注:中国・蘇州にある庭園〕の高解像度の写真のシリーズです。
上海周辺の江南地方の文化に、長く関心を寄せてこられたと伺っています。今季、その要素がいちばん直接的に表れているのはどこでしょうか。
いちばん直接的な表れを挙げるなら、色と、生地の扱い方だと思います。この2つは、私が美をどう理解しているかをそのまま映すからです。
私は上海という非常に現代的な大都市で暮らし、働いています。けれど、自分の内側にある何かといちばん強くつながっていると感じさせてくれるのは、伝統的な建築や庭園、文化、食べ物なんです。
こうしたものは、人のとても深いところにあるのだと思います。その人の土台の一部であって、多くの場合は意識しないうちに、日々の暮らしにも仕事にも影響を与え続けています。
今季は、宮廷の衣装からワークウェアまで、歴史上の参照が幅広く見えます。ご自身の中で、この2つはつながっているのでしょうか。
ええ、もちろんです。一見、互いに関係のなさそうな要素をいくつも組み合わせるのが好きなんです。
単に習慣、あるいは個人的な興味だと見てもらって構いません。はっきり決まった一本の主軸や、一つの明快な物語だけがある、というのはあまり好きではないんです。

CHAPTER 03
「2つか3つ成功すれば、とても良い結果です」——粗さと暖かさを求めた生地
テーマは、どのような順番で実際の服になっていくのでしょうか。
ふつうは漠然としたアイデアから始まります。そこから色とムードボードに取りかかり、漠然としたものを少しずつ目に見えるものにしていきます。その時点で、テーマの背後にある考えがはっきりしてきます。
次の段階は生地です。私はたいてい、生地のためだけのカラーチャートとムードボードを別に作ります。それをもとに、今度は服のデザインにより焦点を絞ったムードボードをもう一つ作ります。
生地の開発には、織りと組織、仕上げの技法、柄、そのほかの加工が含まれます。
生地と付属が決まると、服のデザインに移ります。もちろん、そこにはパターンや構造、技術面の開発も含まれます。
新しく開発した生地がようやく出来上がると、新しいシーズンのサンプルを作り始められます。毎シーズン、このサイクルをたどっています。
今季の生地はどこから来て、テーマとどうつながっているのでしょうか。
今季、生地のために立てたキーワードは2つ、「粗さ」と「暖かさ」です。
ですから、ベースになる生地を開発するうえでは、粗い表面、不均一さ、光沢のなさ、そして暖かさを保てることを、まず第一に考えました。
同時に、生地が、すでに使われた跡や時間の跡をまとっているように見える必要もありました。
つまり、糸、生地の組織、染め、仕上げという開発のあらゆる面を、はっきりとその方向へ向けなければならなかったんです。

以前、1980〜90年代の生地のアーカイブから柄を探し、それを再現できる糸を見つけて織り、その上にプリントを重ねる、という作り方をされたそうですね。今季も、そのように工程そのものから組み立てた生地はありますか。
ええ。もう何年も前のことですが、服の歴史を学ぶことに加えて、テキスタイルについて学ぶことが、私自身の成長にとってとても大事な部分でした。
個人的には、1980年代や1990年代、さらにそれ以前の時代の生地がずっと好きです。
ただ、そうした生地をある程度理解できるようになってからは、ヴィンテージの生地を再現したり更新したりすることに、以前ほどこだわらなくなりました。新しい糸や、新しく開発した生地の組織からも、まったく違う、けれど同じくらい魅力のある結果を生み出せます。
いまは、テキスタイルデザイナーとずっと密に仕事をしていて、インスピレーションは双方向に行き来します。
本当に新しいものを作るのは、実はかなり難しいことです。1シーズンに2つか3つ、新しい生地の開発が本当に成功すれば、それだけでとても良い結果だと考えています。
糸の節やムラを、直さずに残していらっしゃいます。工場には、どのように伝えているのでしょうか。
テキスタイルデザイナーの存在がとても重要です。私と工場のあいだの橋渡し役だからです。
多くのサプライヤーやテキスタイルデザイナーとは、とても長く一緒に仕事をしてきました。その時間の中で、共通の美意識と互いへの信頼を育ててきました。
工場の現場でさまざまな問題が起きても、いろいろな技術的な解決策を使って調整できます。
そして、常に新しいものを作りたいのなら、うまくいかない実験もあり得ることを受け入れなければなりません。

CHAPTER 04
「混沌とした宇宙のようなもの」——1980年代の記憶から生まれた柄と色
今季の柄はどこから来たのでしょうか。実際に見たもの、参照したものを具体的に教えてください。
今季いちばん重要なグラフィックは、混沌とした宇宙のようなものです。
コレクションの一部が1980年代を振り返っているので、写真と手描きのテクスチャーを使って、あの10年間についての私たち自身の記憶を解釈し直しました。その無秩序、振動、抽象的なイメージです。そして、これらの要素を、コレクションの中にある1980年代に着想を得たジャケットと結びつけました。


その着想は、どのような過程を経て、布の上の柄になったのでしょうか。
最初はアイデアがあるだけで、最終的にどんな見た目になるのか、私たちにもまったく分かりませんでした。
背景には、時間によって跡がつき、姿を変えた蘇州の庭園の壁を使っています。手描きのテクスチャーの中には、宇宙の物質や隕石を思い描きました。
こうした別々の要素をデジタルで加工して、新しいシーズンのメインのグラフィックを作りました。
ほとんど抽象画のようなこの図像は、それ自体を「ずれと分離」と呼んでもいいかもしれません。

その柄は、テーマのどの部分を担っているのでしょうか。
このグラフィックは、今季そのものを表しています。
一見すると、服そのものとの関係はそれほど直接的に見えないかもしれません。でも私にとっては、私が記憶し、理解している1980年代の混沌を表すものです。
図像の中でさまざまな要素が混ざり合っていることも、私たちのブランドの考え方や仕事の進め方と一致しています。

今季の色は、温かみのある茶、柔らかなグレー、深いグレーブルー、黒、くすんだ黄色で組まれています。この組み合わせは、何をもとに決めたのでしょうか。
色の選択は、ふつう2つの観点にもとづいています。市場に応える色と、テーマに応える色です。
先ほどお話ししたとおり、今季のテーマはかなり抽象的なので、全体のパレットの一部は1980年代の記憶から来ています。
全体として、この色には、古いアナログ写真や、年月を経たフィルムを思い出させるところがあります。
結局のところ、私たちの色選びは、ブランドがこれまで築いてきたパレットと、各コレクションを準備する中で育っていく直感とが混ざったものです。
今季を象徴する色を一つ挙げるなら、どの色でしょうか。
グレーとブルーが混ざった色です。

以前、「深い青の嵐の中から歩み出てきたような」という表現を使われていました。天候や自然現象を色に置き換えるとき、何を手がかりにしているのでしょうか。
青い暴風雨という感覚は、単純に、濃い青を使ったところから来ています。夜遅くに降る雨のような青です。
雨粒を柄にするという発想は、雨の日に渋滞にはまっているときに浮かびました。
ただ、雨粒そのものは、本当は何色でもいいんです。
CHAPTER 05
「見た瞬間、自分でも試したいと強く思いました」——17世紀のコートから始まった仕立て
今季は、裏地を表に出し、内側の構造を表に見せるデザインが多く見られます。この手法は、どこから始まったのでしょうか。
この技法を最初に試し始めたのは2026SSです。そこから今季に向けて、さらに発展させ、更新しました。
発想のもとは、17世紀のあるコートの構造を見たことです。見た瞬間、この技法を自分でも試してみたいという、とても強い気持ちが湧きました。
狙ったのは、柔らかく感じられながら、構造と張りを保っているものです。
縫い代や芯地〔注:形を保つために表地の内側に入れる布〕が見えるままの作りになっています。見せるために、縫製の順序や仕様を変えたところはありますか。
はい。この新しい構造の作り方は、裏地を全面に付ける一般的な服を作るよりも、かなり複雑です。
難しいのは、表地と、露でレッティング〔注:茎から繊維をほぐして取り出す工程〕した靭皮繊維〔注:植物の茎の皮から採る繊維〕の層とのあいだで、正しいバランスを保つことです。そのため、きわめて精密に組み立てる必要があります。
製作時間でいえば、この方法は、一般的な作りに比べて縫製に少なくとも2倍の時間がかかります。
でも同時に、ずっと面白い体験と結果も生まれます。
裏地や芯地など、表からは見えにくい素材は、どんな考えで選んでいるのでしょうか。
生地そのもの以外でも、服に使うすべての部材と付属を大切なものだと考えています。
服は、外からすぐ目に入るもの、つまり表地やボタン、ファスナーだけでできているのではありません。裏地や内側の素材、そのほかの部材も同じように大切です。服をどう作るべきかという姿勢が、そこに表れるからです。
これも、服は着る人に仕えるべきだという、私たちの根本的な考えから来ています。
体に直接触れる素材には、主にシルクとキュプラを選んでいます。肌に心地よいからです。服の前側のあたりでは、一般的な芯地の代わりに、リネンや、露でレッティングした靭皮繊維をよく使います。
裏地によく使うキュプラ、キュプラコットン、シルクの生地も、私たち自身の要求と理解に沿って特別に開発したものです。
心地よさの先で最終的に作りたいのは、服と着る人が時間をかけて、少しずつ互いへの信頼のようなものを育てていく関係です。

CHAPTER 06
「着たときに初めて、感じ始める」——シルエット、重ね着、パターン
今季のシルエットとスタイリングは、どこから来たのでしょうか。テーマやブランドの考え方とのつながりも教えてください。
今季のシルエットには、大きく2つの方向があります。
1つは、これまでのコレクションで作ってきたシルエットの再解釈。もう1つは、1980年代のジャケットの形をはっきりと変形させたものと、極端に長いコートを取り入れることです。こうした異なるシルエットが共存していることも、異なる要素を組み合わせるという考えを映しています。
ただ、シルエットの話をするなら、構造とディテールの話もしたいんです。今回のコレクションがこれまでのシーズンと違うのは、そこだからです。
具体的にいうと、純粋に構造の組み立てから生まれるデザインの量を減らしました。その代わりに、ディテールとクラフツマンシップへ、より多くの注意を向けています。
服は、ひと目見て大げさに見える必要は必ずしもありません。着たときに初めて、構造のバランス、ディテールとクラフツマンシップの処理、異なる素材が服全体にどう配分されているかを感じ始める。そういう意図です。
ですから、構造の設計はより実用的な方向へ進んでいて、それがコレクションのスタイリングにも影響しています。

重ね着の組み立て方も、今季は変わったように見えます。
今季は、一つひとつのルックの中に、より多くの層と、異なる素材の組み合わせを取り入れたいと考えました。同時に、ずれと分離という考えを表すために、全体のプロポーションについての一般的な考え方を、意図的に少し脇へ置いています。
今季とくに重要になったのが、重ね着への新しいアプローチです。
重ねるために重ねる、ということはしたくありませんでした。無理がなく、納得できるものであること。そのうえで、異なる生地と色が、新鮮に感じられる形で一つになること。それが必要でした。
それによって、コレクション全体が、これまでとははっきり違って見えるようになればと考えました。

テーマがいちばん強く表れている一着を挙げるなら、どれでしょうか。
OM2631106です。異なる生地を組み合わせ、いくつもの着方ができるコートです。

パターンづくりの中心には、着心地と実用性があると伺っています。今季のゆったりしたシルエットは、その考えとどう結びついているのでしょうか。
パターンとフィットについては、たしかに、実用性と着心地をますます重視するようになっています。
妥協が必要になったとき、私たちは服のバランスと実用性を保つために、デザインのほうを変えることがよくあります。言い換えれば、デザインのある部分を意図的に抑えているんです。
理由は、日々の暮らしの中でより頻繁に着てもらい、より長いあいだ着られる服であってほしいからです。
この考えにもとづいて、比較的体に沿う服でも、とてもゆったりした服でも、着心地はパターンづくりで最も重要な検討事項の一つになりました。
これは、素材そのものがおのずと重くなる秋冬にはとくに大事です。そうなると、バランスの取れたパターンが欠かせません。
簡単にいえば、手に持つと重く感じる服でも、着てしまえば、肩を引き下げられるようにも、疲れるようにも感じない。そうあるべきだということです。
オーバーサイズのシルエットで私たちがいちばん大事にしているのは、体を隠せること、服と体のあいだに生まれる距離、そして大きなものを着ることから来る安心感です。
一方で、大きな服はより多くの生地と内側の素材を必要とするので、当然重くなります。
その条件のもとでは、服全体のバランスを保つために、パターンをより合理的にし、構造を最適化しなければなりません。
目指しているのは、服の重さを体全体により均等に分散させること。物理的には重くても、着ると楽に感じられるようにすることです。

CHAPTER 07
「その時点で、デザイナーもブランドも重要ではありません」——パリでの発表と、着る人のこと
今季は、パリのプロテスタント教会で発表されました。この会場を選んだ理由と、テーマとのつながりを教えてください。
候補の会場はいくつかありましたが、この場所を選んだ主な理由は、教会の内装のディテールと色でした。
背景として、コレクションの色や素材と一緒にあって、とても自然に感じられたんです。
教会の写真を初めて見たとき、ほぼすぐに、ここだと分かりました。
最終的な発表は、最初に思い描いていたものにとても近いものになりました。
ランウェイのスタイリングでは、何を考えていましたか。着方によって、テーマの受け取られ方は変わると思われますか。
ランウェイショーのスタイリングは、たしかに、コレクションを観客に示すいちばん直接的な方法です。
スタイリングの方向を変えれば、観客のコレクションの受け取り方や反応も、当然変わります。
色の組み合わせが分かりやすい例です。対照的な色の組み合わせと、調和したトーンの組み合わせとでは、最終的な印象がまったく違ってきます。
それに、コレクションは数点の服だけでは本当には伝えられません。スタイリングの方向を決めることは、コレクション全体を観客にどう見せるかを決めることでもあります。
その方向を選ぶとき、美しさと面白さを両立させるのが難しい瞬間があります。
個人的には、完璧なものより、面白いものを選ぶことが多いです。
今季の背景には、山道と街を行き来する人物像がある、という解説を目にしました。これは合っていますか。違うようでしたら、実際に思い描いていた人物像を教えてください。
ZIGGY CHENを着た人がどんな人物、どんなイメージになるべきか、という考え方を、私はあまりしないんです。
根本的に、それは服と人の関係についての私の理解と食い違ってしまいます。
もちろん、ブランドの公式のスタイリングでは、異なる個性や特徴を持つ人たちがこの服をどう着るかを想像しようとします。けれどそれは結局、デザイナーとスタイリストのやりとりの結果であって、コレクションを観客に伝えるためのものです。正直にいうと、これは私の仕事の中で、ほかの部分ほどは楽しめないものの一つでもあります。
服は着る人に仕えるべきだと、私はずっと考えてきました。人はそれぞれ、自分の好みと、自分をどう見たいかに合わせて、違う服を選びます。服に求めるものも、時と場所によって変わります。
ZIGGY CHENを着たり、スタイリングしたりするとき、最後に立ち現れるのがその人自身の状態と個性であってほしい。その時点で、デザイナーもブランドも、もう重要ではありません。
その意味で、どう装い、自分のイメージをどう組み立てるかについては、誰もが自分の考えと理解を持つべきだと思います。私は一人ひとりの個性を尊重しています。

CLOSING
「日本の市場から、これからももっと多くの声を」——これまでと、これからをつなぐシーズン
今季のコレクションは、ブランドのこれまでの歩みの中で、どんな位置にあるのでしょうか。
ZIGGY CHENにとって、今季はとても重要なシーズンです。これまでのものと、これからやりたいことをつなぐシーズンだと捉えています。
今季は、より多くの変化を加えると決めました。
まず、一着一着に、より確かな実体と存在感を持たせたいと考えました。そのために、さまざまな生地と加工を試し、服の種類を広げ、パターンの精度とバランスを高め、クラフツマンシップとディテールを磨いています。
コレクションのどの部分でも、目標はただ、もう少しだけ良くすることでした。
こうした変化の目的は、ブランドのこれからの発展のために、より強い土台を作ることです。
最後に、日本のお客様へメッセージをお願いします。
長年にわたり、日本の市場でZIGGY CHENが歩みを進めてこられたことを、個人的にとてもうれしく思っています。日本のお客様からいただいてきた支えに、心から感謝しています。
同時に、日本の市場から、これからももっと多くの声をいただけたらと願っています。
この場を借りて、感謝を伝えたい人たちもいます。私たちと一緒に成長してきた日本のサプライヤーの皆さん、そして、長年にわたり私と仕事をともにし、支え続けてくれている友人たちです。

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