第三回
経験と理論に基づいたパターンワーク
2019年06月23日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

第3回の今回はDEVOAのクリエーションを語る上において欠かすことのできないパターンについて。

自身の経験と、独自の理論に裏打ちされた精密なパターンは、ブランド設立から試行錯誤を繰り返し、今尚進化を続けています。

パターン創作の根底にある考え方はどのようなものなのか、過去、そして現在も続く"研究"の過程についてお話を伺いました。

西田 大介

長崎県出身

スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。

自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。

"どの態勢で美しく見せることが望ましいか、どこに空間をつければ新しいシルエットになるか、生地のバランスを合わせ、挑戦しながらパターンを制作しています。"

---DEVOAはパターンに特徴がありますが、どういった考えで製作しているのでしょうか。

パターンバランスについては、服の着心地と合わせて体幹バランスが本人のバランスを無視して変化を与えるように設計しています。

体には心地よく感じたり不快に感じたりする経線があります。

例えば縫い代には生地が集まるため固くなるので、テーピングの巻方向だったり、動作に対して関節に縫い代が関与しないようなパターンワークといったことを考えています。

この考え方はブランドをスタートさせた14年前と何も変わっていない部分です。

これは自分がブランドを立ち上げる時に考えた(パターンの)哲学書です。

どういう風に線を引くかという考えだったり、例えばパンツのシワの出し方の考え方とか、あるいは可動域に対してどういう風に角度をつけていくか、というパターンに関する全ての設計書で、DEVOAの創作の根底にある考え方が記してあります。

結局はこれがブランドとしての考え方であり、根底にあるすごく大事なものです。

---ここに記されている考えを元に製作されていくわけですね。

パターンにおいても、自分の中ではただ単に立体で作るという事が目的ではなく、 理想のバランスを追求した結果が立体の服になった部分が大きいです。

何においても、何をどういう考えで作りたくて、それがどういうものになったのか、そこに行き着くまでのプロセスが何より大切だと考えています。

プロセスが崩れていると何を作っても表面上のものでしかないので、どういう考えでそこに行き着いたかという、そこまでのプロセスが全ての根底にあります。

こういった話は実際に商品を手に取っていただけるお客様には関係ない話なのですが、商品価格を考えれば絶対に手を抜けないところでもあります。

---これを考えたのは先ほどお話しされたブランドを始める前の2年間でですか?

そうです。

自身の考え方というのはすべての根源であり、作品の具現化につながる大切な事です。

これは恵比寿でやった最初の展示会でこれを置いていました。

---スタート時からパターンへのこだわりがあったんですね。

片袖で11回ミシンが止まるようなパターンも作っていました。

パターンも「ここがどうだからこうなった」っていう最初の考え方に基づいたものを製作しているので、パタンナーとはその考えがわからないと理解できないような事ばかり突き詰めていました。

当時の縫製工場様は本当に大変だっただろう。と反省しております…。

パターン自体にこだわっていた事は結果論で、実際はDEVOAの考えを具現化することに 集中していたのでデザインも含め、少し尖ったイメージだったように思います。

---最初のシャツはシャツボックスに入れて販売をしていたそうですが。

一番最初にデザインした服がシャツです。

当時は1年以上かけてトワルを組んでいたと思います。

あまりにも思い入れが強すぎる事と、当時の考えを全て詰め込んでいたので、DEVOAの哲学書をイメージしたBOXに入れて販売していました。

---トワルだけで1年というのはすごいですね。

パタンナーが大変だったと思います。

実際に立体で組んで見るとわかるのですが、皮膚は全方向にストレッチするのに対して、布はそうはいきません。

実際にストレッチ生地を使うことも許されなかったので、毎回着用してはピンワークを繰り返し、平面にならないので何度もやり直ししていました。

よくやってくれたな…とパタンナーには感謝しています。

---コンケープドシャツも作ったとか

当時DEVOAが考えていたシャツがテーラーの考え方に近かったので、実験的に裄綿などをつけて制作したことがあります。

アイテムとしては完全にシャツですが、総裏地で制作して、肩パットと毛芯を使っていない事以外、やっていることはテーラードジャケットと変わらなかったと思います。

---なんだか研究みたいですね。

基本的には展示会は研究の途中経過発表みたいなものです。

哲学はそのままに、パターンはやってきた事を違う角度で考え、フィッティングを変化させています。

人間の体は直立して腕をまっすぐに下ろしている姿勢は殆どありません。

どの態勢で美しく見せることが望ましいか、どこに空間をつければ新しいシルエットになるか等、制作する生地のバランスを合わせ、挑戦しながらパターンを制作しています。

---その改良を重ねて進化していっている。

DEVOAの考え方は変わっていません。

最初期からの流れとしては、いろんなことを試してみてわかったことなどを考察し、今はそれをいかにシンプルにそぎ落としていくかという方向に向かっています。

もしかしたら、またいつか最初にやっていた方向に戻っていくかもしれませんが、今後どういう風に、というのは断言できません。

ただ、シームと取り方やバランスについては、お客様が楽しめるように常に準備しているつもりです。

今後はパターンはもちろん、生地の開発と安定した縫製を含めて、しっかりと品質を守って制作を継続していきます。