第七回
19-20AWコレクションについて
2019年06月27日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

最終回は7月から本格的にスタートする2019-20AWコレクションについて。

ミリタリーのテイストをベースに、DEVOA初となる作品も目を引いた本コレクション。

これまで伺ってきたこだわりが詰まった最新コレクションの様子を、製作の背景を交えてお伝えします。

西田 大介

長崎県出身

スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。

自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。

"常に生地からデザインを製作しています。今期はミリタリーをイメージした生地が多かったので、デザインもミリタリーテイストからスタートしています。"

---19-20AWコレクションでイメージしたり、着想を得たところはどういったものだったんでしょうか。

DEVOAは生地の製作が先行しているので、常に生地からデザインを製作しています。

今シーズンはミリタリーをイメージした生地が多かったので、デザインもミリタリーテイストからスタートしています。

毎回、ミリタリーテイストは入っているのですが、今回は特に仕立て栄えする生地が多かったと思います。

---アイテムとしてはダブルのライダースが印象的でした。

特に意識してデザインしているわけではないのですが、今まではシングルタイプのデザインが多かった事と、革を馬革を使いたかったので、イメージ的にダブルライダースのデザインに引かれたんだと思います。

これは通常のダブルライダースより前の合わせを浅くして製作しています。

背中部分は山本化学工業の石灰石ゴムシートを使い、DEVOA独自のアクションプリーツ構造で製作しました。

この構造を超える次のデザインを模索していますが中々難しいです。

また新たな課題として今後も生み出していきたいと考えています。

---パンツの構成については何か意識したことはありますか?

特にこれといって意識はしていません。

使用した素材として良質なウールなどを多く使用しています。

その為、細いパンツには合わない素材が多くあった事が大きいと思います。

コレクションとしてはバランスを考え、細いパンツと緩いパンツが半々ぐらいで構成されています。

---コレクションの製作していく上ではアイテム単体から考えていくということですか?

そうですね。

生地の製作から考える事が多いので単体で考えるだけではありませんが、初めに大きな構成で考えないようにしています。

パターン構造を合わせて考える場合もあるので特に決まってはいません。

---ではまず生地ありきで、それからデザインを決めるんですか?

生地が一番製作に時間がかかるのでどうしても生地に合わせてデザインをする事が多いです。

パターンはパターンで考えていくので、それらを同時進行で進めていって、後からそれが交差する感じで製作しています。

---次のシーズンのオススメアイテムはありますか?

生地の時にもお話しましたが、ムラ糸を使ったデニムです。

この厚手の生地とタイトなパンツのバランスは、現代のファッションとしては逆行した商品ではありますが、DEVOAを良く表現していると思います。

生地は元々セルビッチの旧織機で織っていてます。

実は2年前には完成していたのですが、その当時は70メートル織った時に機械が壊れてしまったんです。

70 メートルしか織ることが出来ませんでした。

この生地でデニムパンツを制作すると、1本に対して約4m使用するので、コレクションに出してしまうと極少量しか生産できないので困惑していました。

生地の工場様が新しく旧織機を手に入れていただき、また新たに製作出来る状況が出来たのでコレクションで製作しています。

---他のアイテムに関してはどうですか?

デニムもそうですが、トレンチコートだったり、ブルゾンだったり、普通のクラシックな作りのものはサイズバランスを調整しています。

コートなどもオーバーサイズではなく、ジャケットの上から着れるようなサイズバランスを意識して製作しました。

純粋に着こなしを楽しんでほしいです。

---今回は写真家のLENさんとのコラボレーションアイテムもありました。

ブルゾン、トレンチコートにある写真は彼の作品を使っていて、その中から自分がピックアップしました。

プリントする際の表現としてヴィンテージ感のある写真のように仕上げるために沢山の版を重ねてプリントしています。

単純にプリントしているわけではなく初めに写真部分のみ生地抜染をしてから版を重ねています。

版自体は全てバラバラとなり同じ箇所に慎重に重ねてプリント作業を進行するためかなりの手間をかけています。

---同じものがないということですよね。

そうですね。

全て手作業で製作しているので全く同じものがないところも特徴です。

7版を重ねているので作業者は苦労したと思います。

お陰で納得のいく雰囲気に仕上がったと思います。

---プリントは生地の段階で入れたんですか?

これは生地を荒断ちしてプリントを入れています。

製品や反物の状態では作業できないので縫製途中にプリント作業していただきました。

手作業ですから、ぴったり重ねることができないので、どうしてもちょっとしたズレが出るんです。

作業者にもずれてもいいと伝えて作っているので、製品自体はそういう違いが生まれています。

---洋服というより作品に近い感じですね。

これをプリントしてる職人さんはイッセイミヤケ等名だたるメゾンとかも手掛けてらっしゃる方で、そういう方がデジタルではなく手作業でプリントしていただいた事に感謝しています。

作業者からは先染めの生地を綺麗に抜染する事が難しかったと仰っていました。

試作も沢山していただきましたが毎回同じものは1つも無く、作業者の感覚が全てである事が私達にも伝わりました。

製作期間も長かった事と、沢山の協力で今回のプリントが仕上がっているので良い経験と思い出になりました。