
第2回の今回は、西田氏がDEVOAと並行して製作を続けているアートピースについて。
自らが「デザイナーとしての本質を磨く感覚に近い」と語るアート作品は「デザイナー、西田大介」の哲学と感覚そのもの集約して表現しています。
上海やベルリン、京都でインスタレーションを開催するなど、現在も精力的に製作を続けているアートへの思いやDEVOAとの関係、そして今後の展望について語っていただきました。

長崎県出身
スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。
自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。
"アート作品は心に触れるアプローチが自由な分、作ることに時間がかかり大変ですが、全てが自分次第ですので難しく、自由であり、楽しいところです。"
---西田さんは国内外でアートの作品展を開催していますが、初めてアートピースを製作したのはいつ頃ですか?
最初に作ったオブジェは「Bone Extention」※1で7~8年前になります。
DEVOAの根本である医学と革を使ったオブジェです。
骨折、もしくは先天的に骨を延長する場合に用いられる施術と筋肉構造と革の独特の存在感を融合させて製作しました。
医学の知識、立体パターン、革の扱いなど、DEVOAを表現する上での全てが入っていると思います。
以来、考え方の表現方法の一つとして少しづつオブジェも制作しています。
現在は年に1度程度、オブジェクトのみのエキシビジョンを国内外で行っています。

タイトル : Bone Extention
サイズ : 87cm×40cm(直径)
アナログ的な施術を革の表現を使って造形。実際の医学で使われる骨延長施術から着想を得て製作。
---アートピースを作り始めるきっかけはなんだったのですか?
DEVOA自体は哲学的な考えを持って制作に挑んでいます。
その中で服以外でブランドを表現した場合はどういった表現になるのかを考えたことがきっかけです。
-----DEVOAの服作りとアートピースについての関係性はありますか?
関係性はあるものもありますし、DEVOAの服とは関係ないものもあります。
オブジェクトについては服と同じように材料から制作しているものが多い事と、屏風(※2)や掛け軸(※3)などに関しては日本の伝統工芸士に力をお借りして制作している事も、DEVOAではできない事としては大きな経験をさせていただいていると考えています。
DEVOAは私自身であり、アナトミカルなイメージが先行していますが、アートピースについては純粋に自分自身の感覚が大きく影響するのでモノづくりのトレーニングをしている感覚です。
デザイナーとしての本質を磨く感覚に近いと思います。
それが陶器であれ生花であれ屏風でも、創作するもの全てでデザイナーの感覚は問われていると思います。

昨年京都のGallery SUGATAで開催されたインスタレーションの様子。これまで製作したアートピースが並ぶ。
©︎2018 Gallery SUGATA photographer LEN.


タイトル : 屏風 6曲1双
サイズ : 280cm×80cm×6枚
日本に伝わる本来の屏風に対する考えを新しい表現方法として
制作風を屏ぐ、視界を屏ぐ本来の意味を変え、
サイズと色目、質感で空気感、または空間に影響を与える事をコンセプトに制作。
©︎2018 Gallery SUGATA photographer LEN.

左側
タイトル : Neo Definition
サイズ : 144.5cm(縦)×37.5cm(横)×1.5cm(マチ)
絵本作家の長田真作氏との共作。
右側
作品名 : Neo definition(掛け軸)Aタイプ
サイズ : 108cm(縦)×28cm(横)
手漉き和紙はそれぞれ4色の色を混ぜ、乾燥後にしかわからない色目で制作。馬革は古来の染色方法によるタンパク質繊維の塊へ染料が染み込まない様子が、水墨画のような表情を表している。
制作して初めて判断できる色・テクスチャー等の不確かなものを、掛け軸黄金比によって1つの世界に閉じ込めた。
©︎2018 Gallery SUGATA photographer LEN.
---それは洋服を作るときも同じ感覚ですか?
洋服を作る感覚とアート作品を作る感覚は似ているようで絶対的に違う部分が多く存在します。
洋服の場合は上着など決められた場所にある程度の寸法があるのに対して、アートに関しては絶対寸法が自由である以上、創作に関すること全てが自分次第ですので難しく、自由であり楽しいところです。
アート作品は心に触れるアプローチが自由な分、作ることに時間がかかり大変ですが、子供がLEGOをいじっている感覚に近いかもしれません。
作品が完成してからもまだ足し算引き算を考える事が多いです。
---アートからDEVOAを知ってもらう機会にもなりますよね。
そういった機会があれば何より嬉しいです。
私自身、もの作りで判断していただきたいので特に自分の考え方が集約して表現されているアートでDEVOAを知ってもらうことは一番期待していることです。
DEVOAとしては大きなプロモーションを行っていませんが、DEVOAを知らない方が私のアートピースを見てDEVOAを知ってもらうくらい、DEVOAからかけ離れたお客様へアプローチができたら嬉しく思います。
希望としては年に1度はアートのみのエキシビジョンをしていきたいと考えています。

タイトル : 刺し子コート
このインスタレーションのために製作された作品。
モンゴルの古布とイタリアのシルクで製作。
©︎2018 Gallery SUGATA. photographer LEN.

タイトル : Figure Garment
サイズ : 57.5cm(縦)× 37.5cm(横)×9cm(マチ)
服のパターン制作において、昆虫の体幹バランスと同様に作り込み、昆虫展示用のドイツ箱に閉じ込めた。
リアルサイズの1/4で制作し、違った見え方等、視点の違いで感じるものが変わる事も含めて表現している。
©︎2018 Gallery SUGATA. photographer LEN.


1枚目 左側手前
タイトル : Hypothesis and evolution
サイズ : 約70cm(横)×80cm(縦)
人体と服の関係性についての進化論を提唱したパターンメイキングをフィギュアサイズで制作。人体の背中の筋肉(広背筋)にフォーカスし、仮説と進化論をパターンメイキングで表現。革、真鍮にて制作。人体の構造も宇宙であり、美と理のバランスを表現。
1枚目 右側奥
タイトル : Providence
サイズ : 約80cm(縦)×約70cm(横)
8頭の馬革のお尻部分のシェルコードヴァン層のみを使用。16ブロック(1頭から左右で2ブロック)のシェルコードヴァンを裁断した際に大きさそれぞれ不均一なコードヴァン層が1つになる様の刹那を切り取ったオブジェクト。
2枚目手前 作品名 : Ambrotype photo
サイズ : 28cm(縦)×22.5cm(横)×4cm(マチ)
Bone extensionアンブロタイプ写真表現。
©︎2018 Gallery SUGATA.photographer LEN.
---今後アートピースをどういう風につなげていきたいですか?
目標は国立美術館で制作のエキシビジョンを行いたいと考えています。
それは制作現場(生地、縫製等)と考え方(アートピースを含めた哲学の部分)が合わさってひとつのブランドを形成していることを、たくさんの方に見ていただきたいからです。
特に服については沢山の方々が携わっています。
生地や縫製現場等の細かい仕事ぶりや思いなど、将来服飾デザイナーを目指す方やアパレルに関係する方々、単純に各分野のデザイナーなどに新しい発見が見せれたら何よりであり、各現場の活性化に繋がれば一番嬉しいです。
---目標としている道としてはファッションをアートの一部として見せたいと
ビジネス的には全く違うのですが、デザイナーとして挑戦していきたい部分が大きいです。
私が考えるデザイナーとは、本質的に人の心に触れるものを考える、作れる者のみに与えられる称号のようなものだと考えています。
私自身、理想とするデザイナーに向かって精進する日々です。
次回はDEVOAのパターンワークについてお聞きします。